短編

□メビウスは回帰する
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※「誰が為の世界」と同じ夢主

※名前変換無し

※アニメ103話後








幸せな夢を見ていた。

そこには怖いものも嫌いなものも私を傷付けるものも何も無くて、思考すら放棄して大いなる安寧に身を委ねていることもできた。

時々、私はその世界の神様とお話をした。

思い出話をしたり、一緒に色々なことをして遊んだり、難問を一緒に考えたり、神様の創造に力を貸したり。

本当の私はダメダメで、臆病で、嫌われ者で、生きている価値なんてないような人間だけれど。

神様は私という存在を否定することなく全てを受け入れてくれて、とても優しかった。

彼が創り上げた神様は、私にとっても神様だった。











暗い部屋の中で私は目覚めた。

目が覚めてしまったということは、つまりそういうことなのだろう。

ニューロンリンクは機能を停止し、彼の描いた未来は夢に終わった。

まだあまりはっきりとしない視界を持て余しながらしばらくぼんやりと天井を見つめて、それに飽きた頃にようやくベッドに沈んでいた身体を起こした。

AI達は、プログラムの残滓すら残さずに消えていた。

僅かでも彼等の面影を探そうとミラーリンクヴレインズへの接続を試みても、見えない障壁に弾き返されるだけだった。

光の宮殿は。風のワールドは。別の座標ならどうだろう。リンクヴレインズ側からのルートなら。初めて会った場所は。スペアのデュエルディスクで。

思い付く限りの試行を繰り返して、その度にエラーコードの数字の羅列が目の前に積み重なっていく。

ひたすらそれを見続けて心が折れた頃に、再びベッドに身体を沈めた。

きっと見付けられないだろうとは思っていた。

もう何処にも居ないことは初めから分かっていた。

それでも、一筋の光を探したかった。





以前と何一つ変わらないはずの、それでいて何かを喪ってしまった世界は、以前にも増して彩度を失って昏く澱んでいた。

涙を流すことすら億劫で、重みのままに瞼を閉じる。

願わくば、彼等の居る未来を見ていたかった。

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