清掃員シリーズ 原作編

□あらすじ
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【Pendulum Dimention 1】




澪織はいつも通りの朝を迎えていた。

世話係の女性が家族での食卓に澪織を誘うが、普段と同様にそれを断って部屋で一人朝食を取る。

家族には苦手意識があり、極力顔を合わせないようにしていた。

今日も芸事や習い事、家庭教師による授業の予定がびっしりと入れられている。

母親にとってはデュエルの才能の無い澪織へのせめてもの英才教育のつもりなのだろうが、もううんざりだった。

少し家出して、海でも見に行こう。

そう思って、澪織はビル内の防犯カメラの映像を書き換えて監視の目を掻い潜り外へと出た。

家庭的なことから技術的なことまで妙に幅広く教わった習い事は何だかんだで身になっており、電化製品の修理からシステムのハッキングまでお手の物だ。

澪織は舞網市内を歩き、海辺へ辿り着いて腰を下ろす。

潮風は好きだ。

髪を揺らす風が嫌なことも忘れさせてくれる。

こうしていると、よく彼がふらりと現れて──……私は今、誰を思い浮かべていた…?

澪織は自分の不可思議な思考に首を傾げた。

誰かを待っているような気持ちになった気がするが、待つような相手はいない。

ここに来るとしたら、家出した赤馬家令嬢を連れ戻しに来る黒スーツの追手達のような招かれざる客くらいのものだ。

そんなことを考えていると、普段の追手ではなく弟の零児がそこに現れた。

珍しいこともあるものだと思いながらも、ここから更に逃走する気も起きなかったため大人しく彼に従い帰宅することにすると、その道中で話があると言われる。

話の内容は、かつての世界についてのことだった。

零児の言葉で記憶を取り戻した澪織が真っ先に気に掛けたのは、やはりユーリのこと。

ユーリを探しに行くと零児に告げると、一人行かせるわけにはいかないと却下される。

それでも尚食い下がると、この後同じように記憶を取り戻させ各次元を巡らせるつもりだという遊矢に同行する形でなら、と許可が下りた。





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