BOOK

□目に映るもの05
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ーーーガサガサ・・・

人気のない獣道を1列に歩いていく
何度か通った道なのか
先頭の優子の足取りに迷いはない


神社からそう遠くはない山に入り
舗装された道から外れ街灯もない道を進む



「おー着いた着いた」


視界が開け木の遮りもなくなる
緩やかに下り坂となっていて
直ぐ先は崖があり眼下には街の灯りが広がる


「ここは特等席だからな〜
名前もきっと驚くぞ!!」



トリゴヤがレジャーシートを広げるが


「これに7人入るんですか??」




「おう、多分大丈夫だ」


どう見ても小さいサイズのレジャーシートにサドが真ん中に座り
両隣にシブヤとブラックが座る

その前にトリゴヤ、優子、ゲキカラが座る

(サドさん2人も抱えて大丈夫かな)



「名前はブラックの前な」


なぜか悔しそうな優子に
はいと返事をしブラックの前に座ると
後ろから引っ張られ倒れこんだ

起き上がろうとするが
肩を捕まれさせてもらえない


「ブラックさん重いですよ??」


斜め上に顔を向けブラックの顔を見ると
ふっと笑みを見せられた



「お前体重測った事ないのか??
むしろもっと重くなった方がいい」




「重くって言われても・・・」




「お、きたぞ!!」


ヒューーと高い音が見え
正面を向いた瞬間



ーーーパッ・・・ドンッ・・・


目の前の光景に目を見張る
辺り一帯に響く音、空中に漂う火薬の匂い、皆の歓声、虫の鳴き声、


全てが意識から遠ざかる

真っ赤に染まる大きな花が
視界めいいっぱいに広がる


黒に染った空に様々な色の花が咲く
無意識に、すごいと言葉が漏れた


その言葉を聞いたブラックは
何かを言いかけたが止め名前の服を掴んでいる手に力込めた




花火など今まで見た事なかった
興味がなかったのもあるが
今まで一人が当たり前で
それ以上のものなんて望まなかったから


(今日、これてよかったな・・・)


素直にそう思った
二度とないこの景色を忘れないように
しっかりと目に焼き付けようと決めた
















「綺麗だったなーーー」




「最後すごかったっすね」



約1時間かけ全ての花火を見て
帰宅の準備を始めた頃
急に優子の提案でお泊まりという話になり


一番近い名前の家に行く事になった


「ここか」





「はい、あんまり広くないですけど」


玄関を抜けリビングに着くと
エアコンのスイッチを入れた


「てか物すくねぇな」




「本当に必要最低限って感じだな」


テーブル、ソファ、本棚、テレビそれ以外に特に目立った物はなく
まるで空き家のような空虚感を感じさせた


「物があり過ぎても、いつか壊れたり
手放す時虚しくなるので・・・

あ、コンビニ寄ってくれば良かったですね
この家飲み物が全然なくて」


それを聞いたサドとブラックが名前の許可を得てキッチンへ向かった

冷蔵庫にはミネラルウォーターと
チョコレートしかなく
棚の中には大量のカップラーメン

食材や調理器具、食器といった物は
ほとんどなかった



「いくら何でも無さすぎだな」




「ここまでくると食生活が心配ですね」



そんな会話をしていると
名前が顔を覗かせた


「サドさん、ブラックさん
何か食べたいものありますか??


近くのコンビニまで買いに行ってくるので」




「じゃあ、何か炭酸のを頼む」




「サドさんと同じものを・・・
一緒に行くか??」




「いえ、すぐ近くなので大丈夫です
行ってきます」


穏やかな笑顔を浮べ部屋から出ていった






「よ、名前!!」




「あ、学ラン
何、またデートしてきたの??」




「んだよ、またって 笑」




「香水の匂い付いてるよ」





「・・・お前に隠し事できねぇな」


苦笑いしながら一緒にコンビニに入る
と同時に涼しーと頬を緩めた


「学ラン何買うの??」




「飲み物、名前は??」




「ラッパッパのお使〜い 笑」




「パシられてんのか!?」


慌てる学ランに違うよ〜と可笑しそうに笑う
そんな名前をじっと見つめる学ラン


「?? ん?? 何??」




「いや、何でもねー
先行っていいぞ」


首を傾げつつ、お礼を言ってレジに進む
学ランを待って一緒に出ると
待ちかねたように数人の男女に囲まれた



「奇遇だなーこんな所で会うなんて」





「お前ラッパッパの苗字だな??」




「ちょっと付き合ってもらおうか」



面倒だから帰ろうと学ランに言おうとした時コンビニ袋を渡される


「売られた喧嘩は買うもんだ
それにこんな雑魚、ラッパッパのお前が相手なんかする必要ねぇよ」





「んだとコラ!!!!」




「やれぇぇ!!!!」


学ランが強いのか、相手が弱いのか
ほんの数分で全員が倒れていた


「話になんねー
サンキューな名前・・・どうした??」


じっと戦う学ランを見つめていた名前が不意に笑う


「学ランはかっこいいね」
ーーーニコ



「な、は・・・!?」





「あ、アイス溶ける!!
学ランありがとう、またね」





遠ざかる背中を見送り
いまだ気絶する男の上に腰かける


(今のは反則だろ〜〜〜〜!!)


声にならない叫びを心に仕舞い
頭に付けていたバンダナを
目を隠すようにずり下げた
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