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□目に映るもの07
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廊下が騒がしくなってきた頃
携帯の液晶には10時前と表示されていた

ほとんど寝ていない
重い頭で天井を見上げる


「そろそろかな・・・」


灰の入ったバケツを残し
本の山を踏みしめながら
図書館準備室を後にする

教室に入ろうとした時
前田から呼び止められた


「名前!!
昨日どうしたんだよ、急にいなくなって
どんだけ心配したと・・・」

「前田・・・ごめん
どうしても行かなきゃいけなかったから
前田に頼んでもダメって言ったでしょ??」

「当たり前だろ」


全くとため息をつく前田に
ごめんと困った様に笑う


「敦姉ぇーーー!!!
おはようございますーーー!!!」

「だからその呼び方・・・」


前田を見つけ駆け寄ってきた
だるまに気を取られた隙に教室に入ると
オタと目が合った


「あ、名前
昨日大丈夫だったか??」

「うん、ありがとう ニコ・・・」


七輪の暖かい火が目に灯る
ゆっくりと手を近づけ
乾燥した手を温める
炭に着く紅い火に目を細めた


「どうしたんだ??」


うなぎの問に顔を上げ
全員を見てから一息吐く


「お別れ
今日で学校辞めることにした」

「・・・は・・・??」

「え、、なんだよいきなり」


突然の告白に訝しげな顔をする


「おい・・・冗談にしてもきついぞ名前」

「・・・」
ーーぎゅうぅぅ・・・

目が笑っておらず
不安に思ったのか無口が
パーカーの裾を掴んできた


「昨日親戚の人が来て
ほら、爺ちゃんの葬式行ったって
この前言ったじゃん??

あの時から何となく
話には出ててたんだけど

そろそろ本当に向こうで
預けられる事になった」

「そんな急に・・・」


この話に信憑性が増していく
重い雰囲気の中オタが口を開いた


「・・・どこ行くんだよ
学校変えるくらい遠いのかよ・・・」

ーーコク
「でも一時期だけでまた預かり人が変われば
近くまで戻って来るかもしれないし

高校出たらこの街で
仕事探そうと思ってるから
二度と会えない訳じゃないし

だから元気出して ニコッ」

「「・・・・・・」」


未だ俯くホルモンに勢い付けて
七里に触れぬよう飛び越えながら

タックル気味に飛びつき
全員を抱えて後ろに押し倒した


「「うぉぉおおっっ(・・・)!!??」」


慌てふためくホルモンに
今度こそ緩んだ笑顔を見せながら
優しく話しかける


「全く・・・
だから言うの躊躇ったんだよ(笑)

そんな気落ちしないで
私も会いに来るから」


お腹の上でケタケタ笑う名前を見つつも
不安が拭えないのか皆眉が下がっている


「一人暮らし続けるんじゃ駄目なのか??」

「ウナギ、それぞれの家庭がある
預かってもらう奴が我が儘言えないよ」


「守ってくれる奴も居ねぇんだぞ・・・
名前一人でやっていけんのかよ・・・
ひょろっひょろのくせに・・・」

「アキチャ・・・私だってここで何も
学ばなかったわけじゃないよ??

今まで皆の戦う姿で勉強してきた
避け方やいなし方だって身に付いた
戦わない方法だって覚えたんだよ??」


「まだ・・・
あの時のお礼だって出来てねぇのに・・・
何も、、返せてねぇのに・・・」

「あのお金落とした時の??(笑)
何言ってんのバンジー

いつもホルモンくれたり
一緒に帰ってくれたり
面白い話だってしてくれたじゃん
たくさん色んな物くれたよ」


「行くなよ名前、頼むから」

「オタ・・・もう決まった事だよ

言うの遅くなってごめんね
でも、なんかあったら
助けに来てくれるでしょ??」

「当たり前だ!!!」


いい返事に笑いが零れる


「・・・」


泣きそうな無口は未だ裾を離さないが
想いを汲み取ったとしっかり頷くと
ゆっくりと力を抜いた

それを見てゆっくりとホルモンの上から降りそれに合わせてホルモンもそれぞれ起き上がる


「12時に迎えが来る、その前に優子さんやラッパッパにも話さなきゃいけないから
落ち着いたら連絡するよ」


その言葉を最後に
振り返らず教室から静かに出て行った


「本気かよ」

「・・・盗み聞きは良くないって誰かに
教わらなかった??」

「名前こそ、隠し事はいけないって
教えられなかった??」


教室を出た所で学ランや前田に捕まった
ホルモンと同じく
納得のいかない表情で見下ろしている


「なんでもっと早う言わん「言えないって、そんな軽々しく」・・・」


だるまの言葉に笑顔が弱々しいものに変わる


「言ったって変えられるわけじゃないし
あんな状態で何日も一緒に過ごす方が
見てて辛いよ」


未だ悔しそうに唇を噛み締める
ホルモンを顎で指す


「でも・・・」

「聞いていたのならこれ以上言う事はない

前田、何か抱えているなら
早く助けてって言った方がいい
周りの奴らは裏切らないよ
きっと助けてくれる」

「なんでそんな「同じ経験をしたから??
・・・って言えばいいかな」」


前田の目を見つめれば不安げに揺れた


「大丈夫、一人じゃない ニコッ」


だるまを一瞥した後
学ランの肩に手を置き
頼んだよと小さく呟いた
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