BOOK

□目に映るもの06
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ーーーガバッ!!
目覚めたのは見知らぬ天上だった
誰かの家とは認識できる

自分の目に異常はなく
身なりもさっきのままだった


辺りを見渡せば、ベット、本棚、勉強机と
よくある普通の部屋と変わらないのに
自分の目には異世界のように映ってしまう
壁にかかる時計は15時半を指していた

ーーーガチャ・・・
「起きたか??」

見覚えのある声を見て少しだけ安堵する
ここは前田の家らしい

「どうしてここに??」

「学校から帰ってたら駐輪場で倒れた
ゆすっても起きないし仕方なく」

「そっ、か・・・」

(前田にはまだ言ってなかったっけ)

「・・・トリゴヤさんは??」

差し出された水を受け取りながら尋ねる

「???
私が行った時には名前だけだったぞ」

携帯を確認すると優子やブラックから何通もメールが届いており
その中にトリゴヤを見つけたという内容のものもあった

「で、何があったんだ??」

「・・・私に触って何か見た??」

「ん??」

「いいや、何でもない・・・
助けてくれてありがとう」

ゆっくりベットから立ち上がると
前田が驚き腕を掴む

「寝てろ
怪我はねぇみてぇだけど、うなされてたし
泊まってけ」

「・・・分かった
あの、図々しいんだけどさ
・・・何か、食べるのもある??」
ーーー二へ・・・


「あぁ、//
風邪かと思ってお粥作ってたところだ
もうちょっとでできるから待ってろ」
ーーーガチャ・・・パタン

前田が出て行くのを確認し
窓を開ける

部屋は2階だったが問題ない

「ゴメンね、前田」

一度扉の方を振り返り
意を決して窓枠に足をかけた














日が沈み人通りも疎らになってきた道を
ただ宛もなくさまよい歩く

行く宛があるわけではない

何度も何度も頭の中であの映像が流れてくる
雨はさらに強くなり荒い呼吸もかき消される


頭の中で母が言った
『どうして助けてくれなかったの』

「はぁっ・・・はぁっ・・・かぁ・・・さん・・・」


頭の中で父が言った
『なんで見下ろす事しかしなかったんだ』

「はぁっ・・・とぅ・・・さん・・・」


降りしきる雨が鮮血に変わる
目の前が真っ赤に染まる

足が動かない

手にベッタリと血がこびり付く
2つの死体が転がっている

「ぁ、、、・・・・・・」

力が抜ける、声が出ない、

ーーープアァァァッッ!!!!

「っっ、、、!!!!!????」

全てをかき消すように鳴り響くクラクション
視界がヘッドライトの光で覆われる
気付けば目前に・・・


「名前!!!!」
ーーードカッ!!!!






「・・・ぇ・・・ア、キ・・・チャ??」

気付いた時にはトラックが走り去っていき
お腹の上には息を切らしたアキチャがいた

「何してんだよ!!! !!
こんな所に座り込んで!!!!!!」

「ゴメン・・・なさい・・・」

「おい、大丈夫か??」

駆け寄って来たオタが名前を
自分の傘に入れる

「アキチャすげぇよ!!
マジ間一髪だったな!!!!」

「って言ってる場合かよ
死ぬとこだったんだぞ」

興奮気味のウナギがアキチャを助け起こし
バンジーがそんなウナギを宥めつつ名前に手を貸す

「本当に・・・ゴメン
ありがとう」

「全くだよ」

「ーーーバシッ!!」

涙目のムクチが思いっきり叩いてきた
心配でたまらないとその目が告げる

「家まで俺らで送ってやるよ
傘ねぇだろ」

「学校に行こうと思ってたんだ
もう大丈夫、走って行けばすぐだし」

「何で学校なんかに??
多分俺らで最後だったぞ??」

「部室で優子さんが待ってるんだ
でも大した用じゃないと思うから直ぐ帰るだろうけど」

「そっか・・・あ、なぁ、名前・・・」

不安げな目のオタがパーカーの裾を掴む
行かないでと言うように

「・・・ん??
どうしたの、オタ??」
ーーーニコ

笑顔の作り方はもう知っている
痛々しい、空々しい他人を遠ざける笑顔

「・・・いや、何でもない
気を付けろよ」

ゆっくりと掴んでいた手を離す
何も言わず微笑みだけを残し
背を向け走り出す
当然誰も待っていない学校に向かって








裏門から入り
割れた窓ガラスに手をかけ侵入する

外は雷鳴が鳴り響き
雨粒が地面を打ち付ける
髪も服もびしょ濡れだった

雨水が切れた掌から出る血と混ざり
床に滴り落ちる

「はぁっ・・・はぁっ・・・」

寒さか或いは痛みのせいか
震える手で携帯を操る
普段使わない電話をする相手は
1人と決めていた

ボタンを押し通話時間のカウントが
始まったのを確認して耳に当てる

「・・・明日、12時です
お願いします」

それだけ言い電源ボタンを押す
電気が消えている廊下では
待受画面の光が際立って見えた
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