小説
□強がり時計
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「はぁっ、はっ…」
どこまで来たのだろう。
すると、頬に冷たい何かが触れた。
「雪…?」
見上げると、真っ暗な空からハラハラと粉雪たちが舞い降りていた。
その感触と冷た過ぎる外の空気を全身に受けて、目いっぱい息を吸い込んだ。
吐き出すと同時に今度は頬を熱いものが伝った。
「…っ、」
それはとどまることを知らない。
流石に道の真ん中はまずいと思い、近くの陸橋の下に駆け込んだ。
そのまま立ちすくむ私は、このまま悲しみに埋もれそうだった。
珠理奈のことは大好き。
珠理奈のことが大好き。
私は愛情表現を表立ってする訳じゃないし
例えしなくても彼女に伝わってると思ってる。
だってその証拠に、私が見せる珠理奈からの愛の言葉に対する微笑みに、彼女はとても嬉しそうな顔をするから。
独りで橋の下でぼうっとしていると、今までの思い出が蘇ってきた。
玲奈ちゃんが好きなんだ、って伝えてくれた事
2人で沢山出掛けた事
お互いに嫉妬して、長いこと口もきかなくて
もう終わりかな、って思った時に歩み寄ってきてくれた事
「そっか…」
そうだった。
全部、全部珠理奈からだった。
何もかも。
「ごめんね、」
そう呟いたと同時に、壁に預けていた身体がずり落ちていった。
「玲奈ちゃん!!」
薄れゆく意識の中で、珠理奈の声が聞こえた気がした。