小説

□たまには
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この所、残業が続いている。
新規プロジェクトを任されたのはいいが、帰りは遅くなり朝は早い。

玲奈ちゃんには一応、遅くなるから先に寝てていいよ、と伝えてある。

それでも起きて待っててくれる。

それは嬉しいことなんだけど、玲奈ちゃん自身が疲れないか心配だ。

今日だって、外から見るうちの窓には灯りが灯っている。


ガチャー


「ただいま〜」


いつもならすぐ玄関に来てくれるのに、どうしたことか今日はなんの反応もない。


「玲奈ちゃーん?」


不思議に思いつつもリビングに向かった。


ドアを開けると食卓には美味しそうな料理。



と、近くのソファで眠っている彼女。


「また起きててくれてたんだね。」


あたしの帰りを眠いのを我慢して待っていたんだろう。

そう考えるだけで愛しさが溢れてくる。


傍により、暫く彼女の寝顔を眺めた。


白く透き通るような肌には、連日遅くまで起きているせいかうっすらとクマが出来ている。


それを撫ぜるように触れていると、玲奈ちゃんが目を覚ました。


「んぅ…じゅり、?」


「ただいま、玲奈ちゃん。」


「おかえり。ごめん、寝ちゃってた…」


「ううん、全然。寧ろ寝ててよかったのに。」


「…」


茶色の瞳があたしを見据えるのにつられて、あたしも彼女にそうする。


「どうしたの?」


「…から」


「ん?」


「じゅりと、一緒に寝たかったから…」


そう言うと顔を赤くし俯く彼女にたまらなくなり、抱き締めた。


「きゃっ、ちょ、じゅり」


「んーーー玲奈ちゃん。かわいい」


「可愛くない。もう」

「可愛いよ、ほんとに可愛い」


可愛い、可愛くないのやり取りを繰り返していると、ある事を思い出した。


「あ、玲奈ちゃん。」


「ん?」


「明日休みなんだけど、どっか行かない?行きたいとこある?」


「え、うーん…」


喜んでもらえると思ったのに、想像とは違う濁した反応にたじろぐ。


「あれ、もしかして嫌だった?」


「あ、ぃや、そうじゃなくって。明日は1日、珠理奈と家でゆっくり過ごしたいな、って。」


遠慮してるのか、段々と小さくなる声。


「珠理奈、最近家にいる時間少ないし、私は1人でいる時間が多かったから…たまには2人で1日中居たいなって。だめ、かな?」


「…ダメなわけないじゃん!」


そう言うとあたしは彼女に回していた腕を更にキツくしめた。


「いいよ、一緒にいよう。明日はずーっと2人だよ。」


「ふふ。嬉しい…」


玲奈ちゃんの声を耳元で聞いていたら何だか眠くなってきた。


「玲奈ちゃん、久し振りに一緒に寝ようか。」


「うん。」


食事もシャワーもそこそこに2人でベッドに入る。
あたしは玲奈ちゃんを腕の中に入れるようにして抱え込んだ。


「玲奈ちゃん、1人にしてごめんね」


「ううん、お仕事だからしょうがないよ」


「うん。今の仕事が片付いたらめいっぱい出掛けようね」


「うんっ。じゅりと行きたいとこ、沢山ある。」


「えー、嬉しいなぁ(笑)」


暫く話していると、玲奈ちゃんが小さく欠伸をした。


「そろそろ寝よっか」


「うん…」


「おやすみ、玲奈ちゃん」


そう言った時には既に眠りに落ちていた彼女の額にそっとキスをして、あたしも眠りについた。

End
 

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