小説

□夕焼け
1ページ/2ページ

彼女はそう、一言で言えば天使。

笑った顔も、怒った顔も
泣いた顔も、恥ずかしそうな顔も

全てがあたしにとって天使。


「珠理奈っ」


夕暮れ時の川沿いの道。

両手を広げ、少し空を見上げながら歩く彼女に「危ないよ」と言いながら、着いて歩いていると名前を呼ばれた。


「なぁに(笑)」


お仕事の時とは違う、無邪気な子供のような笑顔につられて、笑いながら返事をする。


「呼んだだけ。ふふっ」


夕焼けを背に笑う彼女はそのまま、陽の光に溶けていってしまいそうだ。


途端に不安になって彼女の腕を引っ張り、抱き締めた。


「ん?どうしたの珠理奈」


あたしは時々、今みたいにどうしようもなく不安になる事がある。

玲奈ちゃんが消えてしまうんじゃないかって。

その度に玲奈ちゃんは「消えないよ」って微笑みながら言ってくれる。


今日もそう。


「消えないよね?」


「消えないよ、ふふっ」


「…ホントに?」


「ほんと」


「ごめんね、不安になっちゃう」


「ううん。そのままで、そのままの珠理奈でいいんだよ」


「うん」


「不安になったら私を抱きしめて。離さないで。私の存在を確かめて。」


「うん。玲奈ちゃん、好きだよ。」


「私も。」

End
→後書き
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ