小説
□強がり時計
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Side_R
珠理奈と喧嘩をした。
きっかけは些細な事だった。
お互い仕事が忙しくて、
約束はその通りにいくことが少なくなって、
連絡も頻繁に取らなくなった。
簡単に言えばこれが原因。
「玲奈ちゃんはさ、あたしの事どう思ってるの?」
何気ないそんな一言で私の中の何かが決壊した。
どう思ってるの?
どういうつもりでそんなこと言ったんだろう。
「どうって…」
「あたしは玲奈ちゃんが好きだよ。でも、玲奈ちゃんは違うんじゃないの?」
「なんでそんなこと、」
「最近お互い忙しいよね。それはしょうがない、お仕事だもん。でも、連絡くらいは反応してくれてもいいんじゃないかな。」
確かに、分刻みで動いてるスケジュールがキツすぎて、珠理奈からのLINEや電話に反応する元気もなくてそのままにしてしまうことが続いていた。
………。
でもそれだってお互い様じゃない?
珠理奈は自分のことしか考えてないんじゃない?
「ねえ、玲奈ちゃん。何か言ってよ。」
「…って、」
「え?」
「珠理奈だって返してくれない時あるじゃん!」
思わず大きな声が出てしまう。
でも、止まらない。
「珠理奈は自分だけが被害者みたいな顔してるけどさ、自分はどうなの?そりゃLINEも電話も無視してたのは申し訳ないけど、珠理奈だって必ず返してくれる訳じゃないじゃん!それなのに何?全部私が悪いみたいなこと言われて、どうしたらいいの?もうわかんないっ!!」
「あっ、ちょっ、玲奈ちゃん!」
珠理奈に背を向けて駆け出そうとする私の右手を珠理奈が掴んだ。
けど、
「やめて、離してっ!」
その手を振りほどいて私は走り出した。
離れた彼女の右手が名残惜しそうに空に浮いて見えたのは気のせいかな。