明々煌々
□つかの間の休息
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とにかく、ランサーは衛宮の策略によって、私の予定通り“消滅した”。
…消滅させる必要はなかっただろうって?
必要だよ、ギアスを成立させるためさ。
あのギアスには『ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは、持てるすべての令呪を費やしてランサーを自決させる』と書いてあったのを覚えているかい?
で、擬似令呪ではない、本物の令呪が、一角だけケイネスの右手にはあっただろう?
それを用いて、ランサーを自害させた。
ま、消滅したのは器だけだったんだけど。
でも、結果的に『ケイネスはランサーを自決させる』という条件は満たした。
ギアスは成立したんだよ。
これでもう、衛宮自身は我々を害することができないのさ。
ほら、大きな収穫だっただろう?
おかげで闇討ちの危険性は大きく減った。
彼は根っからの傭兵だから、大体の行動は読めるけど、一々相手するのも疲れるでしょ?
で、私は、聖杯にくべられるはずのランサーの魂を強引に呼び寄せて、新しい体に定着させた。
正直、あんまり凄まじい憎悪を見せてくれたときは、復活したとして、私の指示に従ってくれるかどうかちょっと不安になったんだけど。
でも、ちゃんと事情を説明…っていうか、新しい身体に私のこの一計についてを“知識”として埋め込んでいたから、それを理解して、ちゃんと助手さんを無力化してくれたんだよね。
さすがはランサー。
…いやいや、助けられたのは私の方さ。
ま、これについても、また後でじっくりと語る時間はとるから、話を進めても?
この計画の大体の流れはこんな感じなんだけど、まあもうひとつ仕掛けがあってね。
ほら、普段のケイネスならあんな愚かな選択はしないだろう?
…私の叱責と、ソラウの危機的な状況はさすがにこらえたよね。
怒らないでおくれよ、ケイネス。
それだけ、君を買っているということなんだから。
私の自慢の弟子なら、現在回復しているだけの魔導回路と一角の令呪さえあれば、あの状況くらい自力で切り抜けられただろう?
平常時の君なら、戦線離脱できてしまうから、ギアスが成立しない。
だから、全力で動揺させて、正常な判断をできなくする必要があったんだ。
ま、結果的にケイネスも私の望み通りに動き、全員無事だったことで、ハッピーエンドでいいよね?
え?わざわざ敵方のホムンクルスと接触したかった理由だって?
うーん…あんまり詳しいことはまだ言えないけど、今回の聖杯戦争、ちょっと面倒なことが起こっていてね、その確認と小細工がしたかっただけなんだ。
それがまた、めんどくさい小細工でさ。
種を植え付けるだけでも、こっそりやるには集中しなくちゃいけなかったから、こうして舞台を用意したんだ。
ま、今言えることは、万事うまくいっているってこと。
大丈夫。
君とソラウ、それからランサーは何があっても必ず守る。
下を守るのも、上に立つ人間の務めだろう?
今回だって、なんだかんだで全員の安全は確保していたわけだし。
…って、ケイネス、そんなに睨まないでよ。
ソラウも承認済みだったんだし、ねぇ?
それからランサー、そんなにキラキラした目で見ないで。