明々煌々

□断罪のはじまり
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昼過ぎどころか夕方に目を覚ましたイコは、宿の主人が作ってくれた遅すぎる朝食を食べてから、しばらく部屋でゴロゴロしていた。

ちなみに、ばっちり二日酔いだ。


「うー…気持ち悪い…。
そういえば、昨日帰り際にジルに会ったなあ…何かやらかしそうな雰囲気だったけど」


昨夜の、うまく頭が働かない状態での、古い知り合いとの再会。

ランサーからの情報で冬木にいることは分かっていたが、他の友人知人と違って会う気はほぼ皆無だったので、あれは想定外だった。

なにせ、相手は狂人だ。

ジャンヌを失う前の彼であればまだしも。


「なんか、トチ狂ったこと言ってた気がするけど…何だったかな」


思い出そうとするが、にぶく痛む頭は正直あまり使い物にならない。


「あ″ー…あれを使うか…」


宝物庫から、黄金の水差しを召喚する。

二日酔いの薬、もとい死者すら蘇らせるほどの効力を持つ神薬。

もちろん、二日酔いにも効き目は抜群だ。


それをあおったイコは、先ほどよりも格段によくなった顔色でため息をついた。


「ふう…すっきりした。んで、ジルかぁ…碌なこと考えてなさそうだけど」


彼の言葉をそのまま捉えれば、ジャンヌ復活の悲願は達成されたと考えているはず。

友人であるジャンヌを通じて知り合った当時の、まだ真っ当な騎士であった奴ならともかく、青髭と呼ばれる狂人の考えや行動が、録でもないことは想像に難くない。

そんな魔術師としての常識どころか、一般人の常識すら凌駕するような行動をするかもしれないキャスターに、眠気に負けておざなりな返答をして、その行動を煽った感がある。

つまり今イコがすべきことは、聖杯云々ではなく、とにかく魔術の存在を一般人に知らしめかねないキャスターを見張り、何かやらかすようなら、止めるということだ。


そうと決まれば、まずはキャスター自身の動向を調べなければ、と身体を起こして使い魔の目を使おうとしたその時だった。


「…タイミングがいいのか悪いのか、まったく」


未遠川の方角から、異常ともいえるほどの膨大な魔力が感じ取られたのだ。

よっこらせと立ち上がり、愛用のコートをコートかけから取る。

そうして、足早に宿を出たのだった。
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