明々煌々

□宴のはじまり
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総討戦は実にあっけなく、あっという間に終わった。

圧倒的な軍の力は、たかだか数十人のアサシンを文字通り蹂躙し、兵士たちは勝鬨とともに彼らの主君の名を声高に讃えた。


「「「「イスカンダル!イスカンダル!!」」」」









「幕切れは興ざめだったな…」


ライダーの固有結界がすうっと消え失せると、そこは元の中庭だった。


「なるほどな。いかに雑種ばかりでも、あれだけの数を束ねれば、王と息巻くようにもなるか」


楽しそうなアーチャーは、その紅い瞳をライダーに向けた。


「ライダー、やはりお前というやつは目障りだ。お前は、我が殺す」

「言っておれ。どのみち余と貴様は直々に決着をつける羽目になろうて。…お互い言いたいことも言い尽くしたよな。今宵はこの辺でお開きとしようか」


立ち上がったライダーに、セイバーが待ったをかける。


「私はまだ…!」

「貴様はもう黙っとけ。今宵は王が語らう宴であった。だがセイバー。余はもう貴様を王とは認めぬ」


戦車を召喚したライダーは、哀れみの目をもってセイバーを振り返った。


「なあ小娘よ。いい加減にその痛ましい夢から覚めろ。さもなくば貴様は、英雄として最低限の誇りさえも見失う事になる。貴様の語る王という夢は、そういうたぐいの呪いだ」

「いいや、私は…!」


そのまま去ったライダーを、セイバーは睨んだまま立ち尽くしていた。


「耳を傾ける必要などないぞ、セイバー。お前は、自ら信じる道をゆけばいい」

「さっきは私を嘲笑しておきながら、今度は私に阿るのか」

「無論だ。お前が語る王道には、微塵たりとも間違いはない。正しすぎて、その細腰にはさぞ荷が重かろう。その苦悩、その葛藤…慰みものとしてはなかなかに上等だ。己の器に余る正道を背負いこみ、苦しみに足掻くその道化ぶり…我は高く買おう」


アーチャーは、セイバーを舐めるように眺める。


「セイバー、もっと我を笑わせろ。褒美に聖杯を賜してもよいぞ」


剣を抜いたセイバーが、一瞬にして間合いをつめてアーチャーに斬りかかる。

が、アーチャーは酒盃を盾にしてその斬撃を逃れた。


「宴は終わりだ。疾く去ね」

「やれやれ…いま割れた盃を求め争って、いくつの国が滅びたか知っていような?まあよい、敢えて罰するまい。道化の狼藉に怒っては王の名折れだからな」

「何とでもほざけ。私の警告は一度までだ。次は容赦なく切る!」

「っはははは、せいぜい励めよ騎士王とやら。ことによるとお前は、さらなる我が寵愛に値するかもな。帰るぞ、イコ」

「はいはい。じゃあね、セイバーとアインツベルンのホムンクルスさん。近いうちにまた会うだろうけど」


イコはアーチャーとともに光の粒子となって消えた。
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