明々煌々
□戦いのはじまり
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「その汚らわしい手で我が宝物に触れるとは、そこまで死に急ぐか、犬!」
攻撃を防がれたことに怒ったのか、はたまた言葉通り宝具に触れたことに怒ったのか…とにかく激昂したアーチャーは、背後にさらなる数の宝具を展開した。
「その小癪な手癖の悪さでもって、どこまで凌ぎきれるか…さあ、見せてみよ」
アーチャーは嘲笑い、宝具を次々と打ち出した。
今度こそ、避けきれないとそこにいた者は思った。
それほどまでに、アーチャーの攻撃は苛烈だったのだ。
しかし…
器用に飛んできた宝具を掴み取って後続の凶器をはじいたり、避けたり。
先ほど同様、全く効いていない。
他のサーヴァントなら、こうはいかなかっただろう。
眺めているしかなかった者たちは、これが自分だったらと想像して、背筋が薄ら寒くなる思いだったに違いない。
背後に出現させた宝具が一通り打ち終わり、憮然とした表情のアーチャー。
先程とは比にならないほどもうもうと立ち上る土煙の中から、何かがきらりと輝いた。
「っ、ギル!!」
イコは思わず声を漏らした。
その輝きが、アーチャーに向かって放たれた宝具のものだったからだ。
アーチャーは、イコの警告の声とほぼ同時に上に飛んで、相手の反撃を避けた。
バーサーカーは、掴んだり避けたりした挙句、アーチャーの宝具を投げ返したのだ。
アーチャーに向かって飛ばされた二振りの剣は、片方は虚空を切って後方へ、もう片方はアーチャーが立っていた街灯にあたり、街灯が倒れた。
足場を失ったアーチャーは、地面に降りざるを得ない。
危なげなく大地に降り立ったアーチャー。
その表情は、完全にキレている。
「痴れ者が…天に仰ぎ見るべきこの我を、同じ大地に立たせるかァッ!その不敬は万死に値する!」
そう怒声を上げたアーチャーは、自分の背後にさらなる数の宝具を展開した。
その数は、先程とは比べ物にならない。
宝具の輝きで、あたりが昼間のように明るく照らされるほどだ。
「そこな雑種よ。もはや肉片ひとつ残さぬぞ!!」
再び射出された宝具たち。
その先頭がバーサーカーに届きそうになったその瞬間…
それまで動いていなかったイコが動いた。
「よい、っしょぉ!!」
「……っ!?」
一つ一つが力を持った宝具が雨あられと降り注ぐ中、イコは凄まじいスピードでバーサーカーに迫り、それはもう見事な蹴りをお見舞いした。
周囲と同じく驚いたアーチャーがすぐさま攻撃をやめたものの、すでに射出されていた宝具は止められない。
「――危ない!」
そう叫んだのは誰か。
イコに刺さるかと、思わず周囲が顔を背けたり目を閉じたりした瞬間、イコはいつの間に手にしていたのかはわからないが、とにかくアーチャーが射出した宝具の一つでそれを弾き、吹っ飛んだバーサーカーを追撃した。
しかし、そこはさすが理性をなくし狂化することでステータスを挙げているバーサーカー。
倉庫の壁に叩きつけられたとはいえ、すでに体勢を立て直し、間合いを詰めてきたイコの剣を受け止め…
と思ったら、バーサーカーの視界からイコが消えた。
斬撃を受け止めようと片腕を上げた形で固まり、戸惑い焦るバーサーカーは背後からの衝撃で地面に沈んだ。