明々煌々
□永久のおわり
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イコたちが市民会館に到着したとき、戦いはすでに始まっていた。
移動中に使い魔の目を通して確認した限りでは、冬木大橋でアーチャーとライダーが一騎討ちにて勝敗を決しており、勝ったアーチャーが市民会館へと向かっていた。
その市民会館ではセイバーとバーサーカー、衛宮切嗣と言峰綺礼がそれぞれ戦っている。
「とりあえず我々は、聖杯の元に向かおう」
残るサーヴァントは4体。
イコは、最後に残ったサーヴァントとランサーをぶつけるつもりでいた。
ディルムッドと相性がいいのはバーサーカーだが…とイコは考えて、頭を振った。
――順当に行けば、残るのはギル。
相性的にも、自分の心情的にも厳しいものはあるが、勝てない相手ではない。
それに…とイコは目を細めた。
厳密にはアーチャーを倒さずとも聖杯を降臨させることは可能だ…小聖杯ではあるが、目的を果たすには十分だ。
市民会館に到着したイコたちは、気配を消し、戦う者たちに認識されないように細心の注意を払いながら建物の中にに入った。
魔力の元をたどると、聖杯は会館の大ホールに浮かんでいた。
聖杯からはすでに漆黒の泥が溢れ、舞台上を汚している。
「イコ様…あれは…?」
「アンリ・マユ、この世の全ての負と悪の寄せ集めだ」
聖杯から溢れる予想以上の禍々しさに、ディルムッドは嫌悪を示す。
しかし、イコはためらうことなく聖杯に向かっていった。
「イコ様!」
「大丈夫だよ。刺激を与えなければ、泥はただそこにあるだけだから」
と、言った瞬間、泥による腐食で舞台に大穴が空き、泥は階下へと落ちていってしまった。
残った聖杯は、ただ静かにその場に浮いているだけだ。
「…まあ、こういうこともあるかな」
そうは言いつつもちょっと納得いかなさそうなイコ。
浮かぶ聖杯を見る二人の背に、凛とした声が掛かった。
「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ、イコ」