明々煌々
□余興のおわり
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丸一日の休みは、イコたちにとって有意義なものになったと思われる。
ケイネスとソラウは心ゆくまでイチャついていたみたいだし、イコとディルムッドは語り合うことで互いを理解して、より強い信頼関係が築けたようだ。
翌朝には、みんなすっきりした顔で朝食の席についていた。
「さて、今後のことだけど――」
ソラウが淹れてくれた食後の紅茶を楽しんでいるとき、おもむろにイコが口を開いた。
「細かい動きは、他陣営の動向を確認してから多少変わるかもしれないけど、今後はしばらく傍観に徹しようと思う」
「傍観…ですか?」
なぜ、と不思議そうな顔をするケイネスたち。
「他陣営同士が潰しあうのを待つんだ。昨日は言わなかったが、聖杯が結構厄介なことになっていてね…まあ、予想の範疇なんだけど、私はそちらの調整に手一杯なんだよ」
「厄介なこと、とはなんです?」
「聖杯が、運び手のホムンクルスの意識と融合して、“勝者”がすでに確定されているんだ。衛宮切嗣にね」
「! それは、今すぐ監督役に連絡して、対応してもらわなくてはならないのでは?」
「それは早計だよ、ケイネス。今や監督役は言峰綺礼…彼は、ギルの――アーチャーのマスターでもある」
前監督役を殺したのは、ケイネスだろう?というと、ケイネスは少しだけばつの悪そうな顔をした。
「しかし、一体どういうことです?遠坂はどうしたんですか!?まさか、自主的にサーヴァントを譲るとは思えませんが」
「遠坂時臣は、死んだよ」
「「「なっ!?」」」
「今朝早くにね。使い魔で確認した…“マスターをなくした”サーヴァントと、サーヴァントをなくしたマスター同士で、手を組んだのだろうね」
前から、ギルは遠坂を気に入らなかったみたいだし…というイコの言葉に、ケイネスたちは言葉を失っていた。
「そんな…サーヴァントがマスターを裏切るなんて…」
「遠坂を殺したのは、十中八九、言峰綺礼だろう。…とにかく敵マスターでもある監督役に、無駄に情報を与えるのはよろしくない。それから、“勝者”の決定を覆すのにも、しばらく時間がかかりそうなんだ。だから、しばらく身を潜める。わかったね?」
きっぱりと言い切るイコの決定に、異を唱えるものはいなかった。