明々煌々
□断罪のはじまり
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「な…」
「きゃっ!」
切嗣は両手で、ケイネスとソラウの頭にそれぞれ隠し持っていた拳銃を突きつけた。
ケイネスとソラウは、互いに身を固くして寄せ合い、不安そうにイコをみやった。
だが、イコはしれっとしている。
「貴女が僕を殺す前に、僕はこいつらを殺す。ただでは死なない。こいつらも道連れだ」
イコはのんきに腕を組みながら、切嗣に言う。
「ふむ、そう来るか…じゃあ、こちらも切り札を明かさなければいけないね」
にやりと口角をあげたイコは、とても楽しそうだった。
「ランサー」
「はっ、」
「「「「!?」」」」
イコの横に立ち、その腕に気絶した女───舞弥を抱えて立つのは、先ほど消滅したはずのランサーだった。
「ランサー!?なぜっ…」
驚きの声を上げるセイバーに、ランサーは照れくさそうに笑った。
「主が俺を必要としたからさ」
なんだか先ほどの死に際の壮絶な表情をしていたのと同じ顔とは思えない、幸せそうな顔をしているランサーに、ポカーンとしてしまうのは仕方がないだろう。
「さて、どうする切嗣くん。私の要求に応じるというなら彼女は解放するし、君たちの命も保証してあげよう」
「………」
「別に、全員殺っちゃってもいいんだけど」
「…何が目的だ?」
「当たり前のことを聞かないでほしいな。聖杯だよ。そこのホムンクルスが、聖杯の運び手でしょ?」
「……!」
ピクリと体をはねさせたアイリスフィールに流し目をして、イコはクスリと笑った。
「…なんてね。今日のところはちょっと確認したいことがあっただけなんだ。だからもう帰っていいよ」
「は?」
切嗣はぽかんと口を開けた。
それに、イコは薄い笑みを浮かべて言う。
「私の気が変わらないうちに、さっさとここから立ち去るべきだと思うがね」
「…アイリ、帰ろう」
切嗣は、悔しそうに己の妻にそういった。
銃を下ろして車に向かう切嗣を見て、イコがランサーに合図する。
ランサーは頷き、舞弥をセイバーに預けた。
「舞弥さんは…」
「気絶させただけだ」
心配そうなアイリスフィールに、ランサーは短く答える。
四人を乗せた車が遠ざかるのを確認したイコは、肩をすくめてケイネスたちを見た。
「何が何だか分かっていないみたいだね。アハハ、ちゃんと説明してあげるよ。外で立ち話じゃあなんだから、中に入りなさい」
イコはその場にいる全員を、廃墟の中に促した。