明々煌々

□戦いのはじまり
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「「「「…………」」」」


コンクリートで固められた地面に半ばめり込む形で倒れたまま動かないバーサーカーと、その傍らに佇む可憐な乙女(中身は5桁)。


サーヴァントばりの…いや、サーヴァントを圧倒するイコの戦いっぷりをみた者たちは、呆然としていた。


ふー、と大きく息をついたイコは、満面の笑みでアーチャーを振り返った。


「いや、邪魔して悪かったねギル。この黒いの、あろう事か“私の”宝剣に触ろうとしたからさ」


肩に担いだのは、刀身が二つに分かれており、蔦が絡み合うような形に螺旋を描いている細身の剣だった。


「私のルヴァドラードに触れるのも使うのも、許したのは君ともう一人だけだというのに。“レプリカ”とはいえ、赤の他人に触れられるのは我慢ならなくてね」


つかつかと歩き、地面に刺さったひと振りの剣を抜く。

それは、奇しくももう片方の手でもっていた剣と瓜二つだった。


「二刀流〜なんてね。ギル、これもらってっていい?」


彼女が持っていたのは、“オリジナル”であり、たった今引き抜いたのが、“アーチャーの宝具”であったのだ。


無邪気に笑うイコに呆然としていたアーチャーだったが、突然肩を震わせると、大声で笑い始めた。


「クッ…ハハハハハハ!!!変わらんな。ああ、変わらん!!イコ、そなたはどれほどの時が経とうとも変わらんのだな!!ハハハハハ!相変わらず面白い!」

「かの有名な英雄王のお褒めに預かり光栄。で、それよりこの剣もらってっていいかって聞いてるんだけど」

「ああ、構わんぞ。ククッ…もとよりそれは我が“預かっていた”に過ぎぬもの。一時は我が宝物庫にあったがゆえに、こうして我の宝具として使ったが…元よりそなたのものだ。好きにするがいい」

「ありがとね、ギル」


そう言って、どこへともなくふた振りの剣をしまい消したイコは超ホクホク顔だ。

よほど、ルヴァドラードの“レプリカ”がもらえたのが嬉しいらしい。


「さて、今日のところはこれでお暇するよ。もともと、ただ戦争の参加者を確認しに来ただけだし、私が介入するのは好ましくないだろうからね」


バーサーカーはのしちゃったけど、と悪びれもせずに言うイコは、手を出した件について全く反省した様子はない。

そのまま立ち去ろうとするのを引き止めたのは、案の定アーチャーだった。


「イコよ。せっかくこうして再び見えたのだ。今度、我が滞在する屋敷に来い。久々に酒でも酌み交わそうではないか」

「ああ、それはいい。機会があればお邪魔させてもらうよ」


今度こそ立ち去ろうとして今一度振り返ったイコはそこにいる全員を眺めていった。


「聖杯を求める者たちよ、せいぜい、あがけ」


皮肉げに哂ったイコは、一陣の風とともに、かき消すように姿を消した。



イコが消えたあと、意識を取り戻したらしいバーサーカーに再度アーチャーが攻撃しようとして、宝具の無駄射ちを危惧した時臣が令呪でもって退却させ、
目標を失ったバーサーカーがセイバーに標的を移し、それに便乗しようとケイネスが嫌がるランサーに対して無理やり令呪をもってバーサーカーの援護をするように命じ、
ライダーがバーサーカーを戦車で輓き、退却させたところでセイバー側に着くと宣言し、不利を悟ったケイネスがランサーを退かせたことでその夜の戦いが終わったことなど、
泰山で激辛麻婆を食べていたイコには知ったことではなかった。
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