捧げ物

□捕らえられて。
1ページ/2ページ








ここ、は…?



「起きたか。」



目が覚めれば、両手を後ろで縛られ、口はガムテープで塞がれていた。
世間から言えば、不良と呼ばれる様な人達が数人、目の前にいた。
…なに?



「っ…」



痛い。
一人の男の人が近づき、口を塞いでいたガムテープを思い切り剥がした。



「な、なんですか…」

「別にお前に用はねぇんだ。ただ、お前の通ってる薄桜学園にちょっと借りがあってな。」



彼らの中で、一番偉そうな人が言った。
…どういう事?



「は、薄桜学園が…何かしたんですか、?」



多分、私の声は震えてる。
でも、怖いけど…なんでこうなったか聞かなきゃ。



「剣道部だよ。」

「、剣道部…?」



一くんの所属する部だ。
彼の所属する部活が、この人達に何かしたんだろうか。
…思い当たる節は一切ない。



「ちょーっと、やり合っただけで、あいつら調子に乗りやがってよぉ。」

「ムカつくからな。」



薄ら笑いが、凄く怖い。
…私がこの人達に捕まったのは前に負けた腹いせって事なのかな。



「まぁ人質としてお前を捕まえただけだけど…案外いい顔してっし俺達が遊んでやろっか。」



ニヤリと口角を上げる。
…やだ、怖い…。



中心の男が近寄ってくる。
その後ろで他の男も笑っている。
やだ、触れられるっ…。



シュンッーー



風の切る音がした。
ギュッと瞑った目を恐る恐る開ける。



「こいつに気安く触れるな。」



そこには、私と不良の間に竹刀を振りかぶった一くんの姿があった。
聞いたことのない凄く低い声で、相手を睨んでいた。



「はじめ、くん…っ」



…怖かった。
今まで平然としていたけれど、やっぱりこんなに大きな人達に囲まれていると、怖いのだ。
目の前に現れた一くんに安心して涙が溢れてくる。



「なまえ、もう大丈夫だ。」



さっきと打って変わって優しい声の一くん。



「お前、剣道部の奴だな?」

「はっ、王子様のお出ましってか?」



“調子乗んなよ!”
そう言って、相手は一斉にこっちへ走ってくる。
それを嘲笑うかのように、一くんは私の肩を抱きながら、片手で竹刀を構え、相手を次々と倒していった。




















「遅くなってすまなかった。」



私の部屋で申し訳なさそうに謝る一くん。
一くんが来てくれてからは早かった。
5分もかからず、男達を全員倒したのだ。



「…ううん。あの人達と何があったのかはよく分からないけど、一くんが来てくれて良かった…。助けてくれて、ありがとう。」

「あぁ。…あんたには悪い事をした。これからは怖い思いはさせない。」





“だから、”









俺の目の届く範囲にいてくれ

(あんたに何かあったら、どうにかなってしまいそうだ)
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ