メインディシュ

□Injection 2
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ピンクの猫が宙を泳いでいた。
私はそれをフラタシャイに報告してみたが、彼女の声も猫そのものだった。
みんな猫になったんだ。でもそれも良いと思う。猫のパーティ。
レインボーダッシュが珍しく泣いている。
いつもの勇敢な彼女はどこに消えたんだ。
「レインボー!! 泣いちゃだめ〜〜猫になれないわ〜〜!!!」
そう、猫になるためには明るくならなくちゃ。
フラタシャイみたいに大きな声で。
……フラタシャイってこんな感じだったっけ。
まぁいいや、元気なのはいいことだ。
「あ、猫猫猫。きえる。」
猫がどんどんきえて、体温がするする下がっていくような感覚。
気がつけば、フラタシャイから貰った"ハッピーになる薬"の効果は切れていたようで、倦怠感と先程の妙な感覚が体に残っていた。
レインボーダッシュはいつの間にか居なくなっていた。
「ま、2人でもくれば万々歳だわ。」
フラタシャイが窓の外を見つめながら煙草の煙を吐き出している。
ニット帽の蛾のモチーフがきらりと反射した。
「……ダッシュ、見える?」
「少しだけ…ほら、あの青よ。」
「……みえない。」
青色なんて空の色で充分だ。
というか、空の色しか見えない。
前は空に浮かぶペガサスを全部見ることができたのに。
フラタシャイはまた煙を吐き出すと、私の目を見つめ「ふくさようか…」と呟いていた。
"ふくさよう"ってなんだろう。
服? 福? 吹く?
「あーっ!! ……っのアバズレがっ!!!」
突然フラタシャイが大声を出した。
「ど、どう…し」
「ピンキー! ついてきて! 話しはあと!」
無理に腕を引かれて連れ出された。

連れて来られたのは崖の下。
「このアマ……ふざけんな……」
フラタシャイは怒りを露わに足元の大きなふわふわした青色の塊を掴み上げた。
ところどころ、虹色の毛も見えてそれはまるで……
「れいんぼー……だっしゅ……?」
「ピンキー、レインボーの落ちてる羽拾いな。あ? どうした……」
やっと理解した。
レインボーダッシュは崖にぶつかったんだ。
あの勇敢な友人はもうどこにも居ないんだ。
身体が動かない。悲しみと驚きと疑問が一緒くたになって襲いかかってきた。
ハッピーになんてなれていない……フラタシャイのうそつき……。
「ピンキー、人が来る前に……ん?」
意識がどんどん遠のいていく。
私、どこへ行くんだろう。

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