OTHER
□BLUE MOON
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「あ、やばい」
ふと気づいて発した言葉は、虚しくも前後を包む広大なる闇に吸い込まれていった。
後ろを見ても前を見ても、まっくら。
ひたすら、まっくら。
光といえば壁の縦長い大きな窓から差し込む、青白い月光のみ。
このまっすぐな廊下は、終わりなど無いんじゃないかという錯覚さえ覚える。
高い天井を見上げても、やたらと黒くてめまいがした。
こんな闇だからだろう、たまにある曲がり角の見えない暗闇から何かが出てきそう、そんな子どもの頃に忘れてしまったような感情が蘇ってくる。
今、自分がどこにいるのかわからない。
前後不覚とはこのことか。
「…。」
つまりは私、はい、そうなんです。
迷 っ た ん で す 。
「これは…ほんとやばいな。何やってんの私。
一人になったら迷うに決まってんのに。
本当は私って…バカなんじゃないの…」
言葉にしてみても暗闇に吸い込まれていっただけで。
入団して早3か月。もう、3か月。
なんで?
なんで今頃迷うの私!
そりゃね、任務ばっかで実質教団にいるのはもっと少ないけど。
それでもさ…
自分の部屋に戻ろうとしただけなんですけど!?
なのに、迷った。
現在の時刻は深夜2時。
人の気配なんて全くなくて。
化学班ぐらい起きてるだろうけどその化学班への行き方もわからない。
そりゃそうだよ自分の部屋わかんないんだもん。
つまり打つ手なし。
どうやって自室までたどり着くの!眠いのに!
こんなことならファインダーさんのお言葉に甘えて部屋まで送ってもらったらよかった。
バカなのか私は。
こんな夜中に教団帰ってきて、あたり静まり返ってるし、あの人もはやく部屋戻って休みたいかなって思って。
そう、悲しいかな私の方向音痴は教団の至る所に広まっていて、今日も今日とて同行のファインダーさんに一言かけていただいた。「送りましょうか?」って。
いやでもこんなに遅いし悪いし、もう自分の部屋ぐらい自分で行けるって思ったのに!
人に気使っていいことしたと思ったのになんだこの仕打ち。
コムイさんの馬鹿!なんで私の部屋あんなにわかりにくいとこにしたんですか!
…いやちがう全部私がわるい。ええもちろん。
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