EXO庭園物語

□鳥籠の外へ
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江戸の下町にある
とある芸子屋に
御得意様から依頼が届いた





宴会をするから
舞を見せてほしいとのことだ




普段ならそういった依頼には
花形役者を連れていくのだが

あいにく今日この芸子屋には
修行中の役者しか居ない




仕方ないかと
数人を連れていくことになった









「ベク、こちらへ来なさい」




「はい、ギョンスさん」





男ばかりの宴会会場内に

女のように綺麗な役者、


ベクを連れていくのに抵抗は有ったのだが女形を連れていくのが先方の要望となれば断ることなどできぬ。






「ベク、御前には
宴会会場で舞って貰う」



ベクは役者を目指し
六歳の時から京都から上京してきた身。


我が子のように力を入れて育ててきた故に酒場へ出すのは気が引けた






「私(わたくし)が舞うのですか?

私の様なものが御客様の前に立つなど…」






「渋るのも無理はない
まだ御客様の前に立ったことがないものな。だがそう心配するな」



顔を曇らせて考え込むベク




「ベク、舞ってくれるな?」






「はい、ギョンスさん
舞わせていただきます」





そう返事をしてくれたベクの肩をぽんっと叩き


「振袖を纏い
紅をつけてから表に来なさい」




御客様が宴会会場にいらすのは
七の刻であるから

あと三、四の刻程時間はある






他の舞妓や歌舞伎の習い手も集め
皆で行こうと話した






ーーーーーーーーー


「できました、ギョンスさん」


肩より下で止められた赤い着物に
緑の羽織ものをして
綺麗な帯を巻いたベクの唇には

なんとも美しく映える赤色の紅


髪はもともと長いから
結って貰ったのであろう

綺麗なかんざしを刺している






「べくは、まるでオナゴであるな」


「そう見えるのですか?
光栄でございます
女形が私の憧れですから」




化粧をしたベクを
外には出したくないのだが

いずれは出さねばならぬこと。






「行きましょうか」




そう声を掛け
皆をつれて芸子屋を出た










七の刻丁度に
ベク達を会場へ通し

私も御得意様へ頭を下げた





「亦凡様、御呼びいただき
有り難く存じます」



「気にするでない、
此処は酒の場ゆえ、楽しみにしてる」




にこやかな亦凡様は

我が芸子屋を
何かと支えてくれている一番の御得意様であるから何にあっても
断ることなど言語道断、



下手をすれば命を落としかねないのだ






「これからも
何かと我が芸子屋を
よろしゅうお願い致します」



「まぁ、そんなに畏まらずとも

酒を呑むがよい」






勧められたが酒はあまり好きではないので一杯のみで止めておいた



僅ながらではあるが歌舞伎をしてみたり
三味線を弾いてみたりと

宴席は盛り上るばかり。




中でも盛り上ったのは

予想通り


ベクの舞いであった
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