なんでだろう、涙が(ヒロアカ)

□個性把握テスト
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 そして、突然始まった個性を使っての体力測定。トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し除籍処分、という最悪な罰ゲームを持ち込んできたので、皆全力で個性をフル活用し測定をする。

私も持ち前の運動神経とお父さんの昔からの扱きで得た運動能力、プラス個性で、どうにかこうにかやりくりしている。


しかし、個性の扱いがあまりにも下手すぎて、個性使わずに普通にやったほうがいい記録が出る。お父さんが個性を使うことに厳しかったから、個性をこんなに使うのは久しぶりで加減が分からないのだ。
50m走にいたっては、80m飛んで失格という・・・そんなルールあり・・・?泣いちゃいそう。

50m走、握力、反復横飛びなどなど。皆普通の人ならありえない数字をたたき出しながらクリアしていくのを見て自分にも焦りが出てくる。

このまま除籍か、私。父さんなら喜んでする。そしてザマァって顔で見てくるに違いない。うわ、腹立つ。

恐ろしい結末を考えていたとき飯田くんが近づいてきた。

 「どうしたんだい?なんだか顔色が悪いぞ?」
 「あー、うん。まあ、ちょっと。50m走どうだった?」
 「3秒04だ」
 「・・・あー、そうなんだ」

 くそぅ・・・速いなぁ。

 「それより緑谷くんはこのままだとまずいぞ・・・?」

 飯田くんの目線には悔しそうな顔の緑谷くんがいる。確かに飛び抜けた記録は出ていないようだ。このままでは最下位になってしまう。でも、最下位から2番目をギリギリ走っている私としてはそのまま行っていただきたい。

「ったりめーだ 無個性のザコだぞ!」

 金髪の男の子、(確か爆豪くん)が横から話しかけてくる。

 無個性・・・な訳ないわ。だって、試験のときのロボットワンパン、無個性でやったん?あれ、あの子じゃなかったんだっけ・・・?いや、あの子だよね。


 ボール投げの競技になる。
 私はボールを瞬間移動させたので、500mの記録を出せた。1番とは行かないけれど、なかなかいい記録を出せて一安心する。
 私のライバルの緑谷くんは何やら思いつめた顔をして、ボールを見つめている。何かすごいことするのかなぁ・・・

 「46m」

 あれ、普通。

「今、確かに使おうって・・・」

 個性で吹っ飛ばすのかと思ったけど、そうはしなかったらしい。
 ・・・まあ・・・まさかお父さんもそんなことはしないだろうし・・・

 「個性を妨害した」

 まさかでした。
  相澤先生、それって妨害工作じゃないですか。でも、もっとやってください。

 緑谷くんがお父さんの個性を見て、イレイザーヘッドがどうこう言ってる。お父さんのことを知っていてちょっと驚く。メディア嫌いのアングラヒーローで、ネットで調べても名前はほとんど出てこないぐらいなのに、すごいな。

 緑谷くんは真剣な表情で一つ息を吐き出した。腕を持ち上げる。

「705.3m!!!!」

 爆風とともにボールが飛んでいく。わぁ、すごい力。


 「先生・・・・!!まだ・・・・・動けます!!」

 緑谷くんが腫れ上がった指を庇いながらも大きな声で叫ぶ。お父さんはニヤリと笑った。満足ってことかな。
 私は心の中で小さく拍手をしたのだった。






  結局、個性把握テストの罰ゲーム、もとい除籍処分は嘘ということになった。


 「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

 なんて言っていたけれども。八百万さんはありえない、とか言ってましたけれど。

 ・・・お父さんならやりかねないと思うんだよね。いや、わからないけど・・・お父さんは合理的なのが一番好きだから、ヒーローになれる見込みなかったらすぐ除籍処分にしちゃいそうだし・・・

 そういう不安は、苦笑いで包み込んでおいた。


 





  家に帰ると、お父さんが一言。

 「ギリギリかよ」

 〔笑〕って感じで言ったのむかつく!最下位から2番目でしたけど、今から成長するんですぅ!

 「っていうか、何で担任なん!?」

 「・・・おい、教科書投げるな。一年間よろしくな」

投げた教科書はさらりとキャッチされる。お父さんが上機嫌に笑っていたので、私はうなだれるしかなかったのだった。

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