なんでだろう、涙が(ヒロアカ)

□体育祭まであと少し
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職員室に向かったお父さんと下駄箱で別れ、私は教室に向かう。

教室に入った途端、ざわついた空気が一瞬にして静まる。少し動揺してしまうけど、気のせいかなと思い直した。

教室に入って自分の荷物があることを確認する。USJ敵襲後焦りすぎて持って帰らず、 2晩教室に置きっぱなしになっていたのだ。

「おはよう、七瀬ちゃん!」

隣の席の麗日ちゃんが今日も明るく挨拶してくれる。近くで二人で話していたらしい、芦戸ちゃんも手を振ってくれる。

「おはよう、あ、芦戸ちゃんもおはよう」

私も笑って返事しておく。

「あ、のさ」

「……なに?」

気まずさを乗せた声色で芦戸ちゃんが聞いてくる。

「……相澤先生と、七瀬ちゃんて、どういう関係なの?」

「……ふつーに親子?」

「親子かぁ!!」

みんな、親子だってーと芦戸ちゃんがクラス全員に告げると、三者三様の反応が返ってくる。
マジかー、と悔しそうなもの。だろうね、と納得したようなもの。本当に?信じられないと驚いた顔をしているもの。


「みんな2人って親子なんかな、兄弟かなー、親戚かなーって話してたんよー」

「そうなの?っていうか、私言ってなかったっけ?」

隠しているつもりのなかった私は逆に驚いてしまう。

ああ、でも年が近すぎるからかな。飯田くんのお兄さんと、お父さん同期らしいし。私たちが親子というには年が近すぎるのは明らかだ。

まあ、深く考えたら負けだな、これは。そこには地雷が埋まっているのだ。わざわざ掘り返す事もない。


「やっぱり親子かー」

「おい、上鳴!お前、愛人説押してただろ!」

「それいうなよ!!瀬呂のお隣さん説も間違ってただろー」

みんなそれぞれ好き勝手言っていたみたいだ。愛人とか、笑うしかない。

「相澤先生大丈夫そうなの?」

みんながざわめくなかで、麗日ちゃんがこっそり聞いて来る。

「うん……なんとか。学校もきてるよ、今日」

「そーなん!?よかったぁ」

ホッとした顔で、麗日ちゃんは頷いた。

「皆ーーー!!朝のHRが始まる 席につけーーー!!」
「ついてるよ、ついてねーのおめーだけだ」

臨時休校明け、朝から飯田くんが元気に委員長している。
普段の光景だけど、なんだか久しぶりの様な感じがする。よかったな、こんな風にまたみんなで学校来れて。


「お早う」

お父さんがドアを開けて入って来る。

「相澤先生復帰早えええ!!!!プロすぎる!!」
「先生無事だったのですね!!」
「無事言うんかなぁアレ……」


包帯ぐるぐる巻きの状態に皆驚いている。どっからどうみても、重症患者です。病院行けって感じだからなぁ。ていうか、本当に病院行ってください。


「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねぇ」
「!?」

お父さんの言葉にドキッとする。戦い……またあいつらが来るっていうこと?

私はぐっと拳を握り締める。

「雄英体育祭が迫ってる!」
「クソ学校っぽいの来たあああ!!」

紛らわしい言い方して楽しんでるな……もう!
それにしても敵に侵入されたばかりだというのにイベント開催ってどうなの?危機管理おかしくない?って思ったけど、逆にこの状況で開催することで雄英のセキュリティーの高さを示す目論見らしい。ちょっと七瀬分かんなーい。

確かに全国が注目するビッグイベントだけど。ここで危機管理体制をアピールすれば今回の襲撃に対する対応はバッチリですって示せるけど。でもさぁ……


「何より雄英の体育祭は……最大のチャンス。敵ごときで中止していい催しじゃねえ」

「いやそこは中止しよう?」

 それな。

「峰田くん、雄英体育祭見たことないの!?」


雄英体育祭はトップヒーローたちがスカウト目的に集まるイベントでもある。
つまり私達のようなヒーロー志望の生徒にとっては最大の見せ場。自分をプロ事務所に売り込むチャンス。
卒業後、いきなりプロデビューする人もいるみたいだけど、大多数はプロ事務所のサイドキック入りから始まる。
そこから先プロデビューするかサイドキック止まりかはその人の実力次第だ。
当然、どのヒーロー事務所に入るかで民衆の認知度も変わってくる。
有名な所に入るには、今回のイベントで目立ってプロたちに見込まれなければならない。

だから、体育祭が大切っていうのは分かるんだけど。


「時間は有限。プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に一回…計三回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」

楽しそうなお父さんに心の中でそっとため息を吐いたのだった。
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