なんでだろう、涙が(ヒロアカ)
□2回戦目
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爆豪くんの勝利を見届けて、私は控え室に向かう。轟くんと緑谷くんの戦いも観覧席で見たかった。が、瀬呂くんと轟くんの試合が一瞬で終わってしまったことを考えると、早めに控え室に向かっておいた方がいいと思ったのだ。
控え室には私しかおらず、会場からの音も遠い。時折聞こえる爆発音と歓声を聞きながら、椅子に座っていた。
「・・・おい」
控え室のドアが静かに開いた。
そこには包帯に覆われたお父さんの姿があった。
「ちょっと・・・お父さん。まだ包帯取れてないんだから、うろついたらダメでしょ」
「問題ない」
包帯に覆われて指も出ていない腕でお父さんは器用に扉を閉める。
「お前一人か?」
「うん、次、試合だからと思って控え室来て見たけど、轟くんと緑谷くんの試合長引いてるみたいだね。お父さん、試合見なくていいの?」
「後でビデオみる」
そう、と私は頷く。
しかし、謎だ。お父さん、なんでここに来たんだろう?
私がその疑問を口に出そうと思った時、お父さんは口を開いた。
「その・・・頑張れよ、七瀬」
思いもやらぬ言葉に驚く。
「・・・なにそれ、贔屓じゃん」
思わず憎まれ口を叩く私。
「そうだ、だから秘密にしとけ。じゃあな」
苦虫を潰したような声色でそれだけ言って、お父さんは控え室を後にした。
頑張れよだって。
お父さん、ずっと私がヒーローになるのに反対してた。なのに、そんなお父さんがヒーローになるための重大な行事の雄英体育祭で、私のこと応援してくれた。
ねえ、お父さん。私がこんなに嬉しいこと、多分わかってないよね。
「頑張る・・・!」
私が頬が緩むのを必死に治そうとしている最中、轟くんが勝利したというアナウンスが流れた。