想いは人それぞれ
だから、興味を持つのも
面白いと思うのも詰まらないと思うのも
アナタ次第に御座います 
  
ではどうぞ↓↓
 
 
     『かぐやの物語』

それは
ある日の雨上がりの夜だった
バイト帰りにふと川をみた事が始まりだ
川には大きな丸い月が“出ていた”
夜空をみてみるが、川に映った月は
どこにもなかった
また川に目をやると
丸い月はやっぱりそこにあった
そう、まるで川に月が“出ていた”と
表現していい出来事だった

だけど不思議なことに
懐かしいと心の中で
私は思っていたのかも知れない
川の近くまで降り、無意識と手を出した
だが、雨上がりだったからなのか
足を滑らしてしまったのだ
案の定川に落ちてしまったので
急いで上がろうとしたのが……
なんと身体がピクリとも動かなかった

動く事が出来なかった為
そのまま川の底へと深く深く沈んでいく
しかしそこで疑問が生まれる
この川は、そんなに深かっただろうか
いや、そんな事はない
なにせ夏になると水遊びに来れるくらい
この川は浅かった筈だ

次第に息が出来なくなり
私はそのまま意識を失った

「……っん」

気がついた私は、上半身を起き上がらせ
周りを見渡した
知らない所だった
昔話に出てくる建物で
和を感じさせる雰囲気だった
そして、上を見上げれば
先程川でみた月があった
今度はちゃんと空にもある
とても綺麗な満月だ

「──オイ、そこで何をしている」

暫く月を見ていると、誰かの声がした
低い声に男性だと分かり動揺する
それはそうだ
川に落ちて気がつけば
見知らぬ場所でいたなどと
誰が信じてくれようか
挙げ句、今居る場所は
誰かの庭の池の中なのだ
怪しまれて当然だ
しかしどうしたものかと悩んでいると
後ろで人が動く気配がする
どうやら男性が近づいているらしい
急いでここから逃げなければ
そう思うのに、何故か身体が動かない
また川に落ちた時のようにピクリとも
金縛りにあったように動かなくなる

もしも、ここが自分の知らない所なら
何が起きるか分からない
もしかしたら殺される事も……
そう考えると怖くてたまらなかった

「オイ、聞こえているのか」

男性の低い声は、苛立ちで満ちていた
どうやら短気のようだ
尚更怖くて振り向きたくないと思うが
あまり刺激をしたくはない
仕方なく振り向くと
なんとまたしても驚かされた
振り向けたこともそうなのだが
服装が自分とは全く違ったのだ
男性の服装はまるで“源氏物語”などに
よく見掛ける服装だった

此方がパチクリと瞬きしていると
男性も驚いているのか
固まってしまった
男性の驚きように、もしかしたら
自分の服装が異常だったのかと焦り出す
いや、しかしそれにしても
ジーンズにTシャツのどこが異常だろうか
バイト帰りだった為
オシャレな服装では無いものの
それでも“普通”の枠に入るのではと思う

「……クシュンッ」

色々とフル回転で考えていると
寒気がしてついクシャミが出てしまった
慌てて手で口元を抑えるが
時既に遅しと言った所だろうか
我に返った男性がまた近づいてくる

「…そこで居ては風邪を引く」

男性は先程の苛立ちが嘘のように
優しい声でそう言ったのだ
少し警戒はあるが、男性の言うとおり
早く池から出なければ風邪を引くのは
明白の事だろうと思い
立ち上がろうとするのだが
未だ身体が言うことを聞いてくれない
が、先程より少しは動くらしいので
必死で池から出ようと努力してみる
しかしなかなか上手くはいかない
すると、それを見かねた男性が
溜め息を吐きながら
「なんなんだお前は」とまたしても
苛立ちの籠もった声で言うのだ

事情も知らないのに
一々苛立たれては、此方の身も保たない
タダでさえ訳の分からないことになって
頭がついていけていないと言うのに
初めて会った者に対し
その態度は無いのではと、辛くなった
辛くて辛くて、ついには涙を流した

「お、オイ!何故泣くんだ」

我慢仕切れなくなった涙をみた男性は
それはもう、オロオロと戸惑っていた
どうやら女性の涙には弱いらしい
けれどこの涙を流させたのは
他でもないこの男性なのだ
涙が止まらず泣き続けていると
近づいて来た男性が
服の袖で涙をソッと拭き始めたのだ
驚き顔をみると、男性も辛そうな顔で
「泣き止んでくれ」と言ったのだ
やっとの思いで泣き止み男性に
「身体が動かせないの」と言うと
濡れるのも構わず、男性は池に入り
自分を姫抱きにして出させてくれた

少し申し訳ないと言う気持ちになり
礼を言うと「泣かせたお詫びだ」と
優しく頭を撫でてくれたのだ

私は思った
もしかしたら、この男性なら
全てを話しても平気なのではと
しかし全てとはどこからどこまでだろう
そして話した後の反応が少し怖い
拒絶をされるのではと
例え赤の他人だとしても
拒絶をされるのは辛くて悲しいものだ

悩んでいると、男性が気まずそうに
頭をガシガシと掻き溜め息を零した

「…俺の名は安倍貴久“アベノ タカヒサ”だ」

何を思ったのか分からないが
男性はそう名乗りを上げたので
自分も一応名乗ることにした
「藤城ユリ」と名乗ると男性……貴久は
「…そうか」となんだか歯切れの悪い
違和感のある返事を返してきた
少し気にはなったが今の状態では
あまり落ち着いて考えられない程に
身体が冷えて寒気を感じたのだ
震えていたのが伝わったらしく
渡り廊下と思われる場所に座るように
座らした貴久が慌てて己の着ていた
羽織りを有無も言う前に肩にかけて
「大丈夫か」と心配な顔で此方を
見つめてくるのでまたしても礼を言った
しかし貴久の言葉も先程と同じ言葉で
少しだけ互いの顔を伺い
可笑しくなったのか少しだけ笑いあった

何故自分が、ここに居るのか
どうやって来たのか
分からないことは沢山あるけれど
今はまだ、この雰囲気を壊したくないと
不思議なことに思ってしまった

…けれどもそれは、睡魔によって
終わりをつげようとしていた

「おい?」

遠くから貴久の呼び声が聞こえたが
応える暇もなく、眠りについた

そしてこれが、物語の入口に過ぎないと言うことをもう少し後に知るのだった  
  
  
  
  
 
如何でしたか?
この物語は、いずれ書くかもしれないし
書かないかもしれない作品の一つです

続きが有るかも無いかも分からない
この物語を、アナタはどう思いましたか?

最後に、これを最後まで読んで頂いた
読者様に一言

「読んで頂き誠に有り難うございます」
 
 
 

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