BRAVE10
□第弐.五話
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うわばみ退治が終わって、皐月が丸一日眠って目覚めた後の話
「…はぁ。やっと帰ってったか」
「………お前は戻らないのか?」
才蔵はなんとか伊佐那海達を追い払って一息付いていると、皐月が不思議そうに才蔵に聞いた
才蔵は皐月に振り返り、先程とは違い少し真剣な顔つきの瞳で皐月を見つめた
「……?」
「お前…あのどす黒い飴を食べる前にもなんか食ってたろ?なのになんでそれも食おうとしてたんだよ?」
「…ああ、あれか」
皐月は才蔵の言いたいことが分かり、さっき横になったばかりの身体をまた上半身だけ起きあがらせた
「最初に食べたのは意識を保つ為の飴だ。まぁ、簡単に言えば脳を活発化させる効果がある」
「あ?てことは、あん時からヤバかったってことかよ!?」
「…ヤバいの意味は分からないが、あれを食べていなかったら既に意識を手放していただろうな」
「……それを”ヤバい“っつんだよ;;」
「?……そうか。あーゆうのが”ヤバい“と言うんだな?理解した」
「お前な…;;」
真剣な顔で(?)理解したと頷く皐月に、才蔵は溜め息混じりで呆れて頭を抱えた
「つーか、激マズだって分かるなら美味いとかもわかんだろ?普通」
「味覚はある。ただ、それが美味いか不味いかの区別が分からないだけだ」
「でも、あのどす黒い飴は激マズなんだろ?」
「ああ、苦すぎて食べれたモノじゃないと言う意味だ」
「……どんだけ苦いんだよ…;;」
「試しに食うか?」
「要らねーよ!」
皐月はどこから出したのか、飴玉の入っているであろう包みから今にでも飴を出そうとしていたので、才蔵は慌てて否定した
「…そうか?」
「てか、お前のお手製の飴って幾つあんだよ?;;」
「普通の飴も合わせたら数えきれないくらいはある」
「普通の飴?」
「ああ。頼まれたら何でも飴にしてやるぞ?」
「……一応聞くが、たとえば?;;」
「つい最近のだと伊佐那海に頼まれて作った、みたらし団子味の飴がある」
皐月の言葉に才蔵は頭を更に抱えた
「…はぁ。伊佐那海も伊佐那海だが、斎田も斎田だな」
「なんだ?何が言いたいんだ」
「…あのな、みたらし団子が飴になったらみたらし団子じゃねーだろ!」
才蔵が最もなツッコミを入れるが、皐月はどうやら理解出来ていないようで首を傾げる
「…?伊佐那海は喜んで食べていたぞ」
「………もうツッコム気も起きねぇよ…;;」
(ドイツもコイツも……変わった奴しかいねぇのか、ここは!!)
才蔵は疲れたようにうなだれると、スッと立ち上がって「…俺ももう寝るわ」と言って襖を開けようと手をかける
「才蔵、」
「……なんだよ」
「お前にこの飴をやる」
皐月はそう言って、才蔵目掛けて何かを投げる
上手くキャッチした才蔵はそれをみる
すると、皐月の持っている包みの色違いの包みが手の中に収まっていた
「…これは?」
「疲れた時用の普通の甘い飴と、疲れを取る効果がそこそこある飴だ。後、緑色の飴は体力回復の効果がそこそこある飴だ」
「……全部の効果がそこそこかよ…;;」
「仕方ないだろ。出る効果は人それぞれだからな」
「まぁな。……有り難く貰っとくわ」
「そうしてくれ。それはお前専用に一応調合して作った飴だからな」
「………えっ?」
(なんか今、サラッと凄いこと言わなかったか?コイツ…)
才蔵はマジマジと手の中にある飴の入った包みを見つめ皐月を見てみると、皐月はもう上半身を横にしている所だった
「……?なんだ、まだ何かあるのか?」
「…いや、なんでもねぇよ。んじゃ、さっさと治してまた手合わせ頼むわ」
「承知した」
皐月はまた、あの柔らかい表情で答えた
それを聞いて才蔵も皐月の部屋を出て行った
「……俺ももう一眠りするか…」
横になった皐月は再びくる睡魔に従うように眠った
(…俺専用に作った飴か…。悪くねぇな)
自室に戻った才蔵は皐月から貰った飴の入った包みから”普通の飴“と書かれた飴を取り出し、包みから取って口の中に放り込むようにして入れる
「……甘っ…」
口の中でコロコロと転がしながらも、吐き出すことも無く飴が無くなるまで舐め続けていた
唇の端が自然とつり上がっていたのは、言うまでもないだろう
〈オマケ〉
イサナミ『才蔵!見てみてー』
サイゾー『あ?なんだよ』
イサナミ『皐月に作って貰ったんだー。みたらし団子味の飴!』
サイゾー『………;;』
イサナミ『スッゴいんだよ!本当にみたらし団子の味がするんだから!!』
サイゾー『…なんでお前が誇らしげに言うんだよ;;』
イサナミ『イイからイイから!才蔵も食べてよ!』
サイゾー『いや、俺は遠慮す……ムグッ!?』
才蔵が伊佐那海によってみたらし団子味の飴を無理矢理口の中に押し込まれ、仕方なく才蔵はコロコロと口の中で転がした
イサナミ『ね!?みたらし団子の味でしょ!』
サイゾー『…美味い;;』
サイゾー(どうやったらこんなのが作れんだよ!;;)
才蔵は皐月の腕の良さに改めて驚かされたのだった
サイゾー(つか、飴にこだわり過ぎだろ!?)