鎖に縛られし蝶
□四話
1ページ/7ページ
〜神田視点〜
アイツが部屋から出ていったあと、俺はする事もないと暇を持て余していた
『窓ガラスには近ずくな、いいな?絶対だからな?』
何故あんなに窓ガラスに近寄るなと言ったのか不思議で、俺は興味本意で窓ガラスに近づいた
もし鍵が掛かっていなかったら、そのまま逃げ出すつもりだった
「……(アイツも出て行っていいっつったしな)」
けれどそれは儚く失敗した
窓はちゃんと鍵が掛かっていた
「……(チッ……あ?)」
引き返そうとして足を止めた
視界に数人の人が見えて、改めてみると下にはさっき部屋を出て行ったアイツもいてなにやら揉めていた
「(なにしてんだ?)」
すると、いきなりアイツの胸ぐらを掴んだ男がいた
驚いた俺はそれを凝視する
「(……アイツなんであんな冷静なんだ?)」
そう、アイツは胸ぐらを掴まれたというのにいたって冷静に相手の顔をみていたのだ
暫くすると、アイツと胸ぐらを掴んでいた奴と下っ端らしき奴らはその場を去っていった
……家に引き返すアイツの顔が一瞬だけ見えた俺は少し驚いた
その顔は、どういったらいいか分からないような顔だった
一言で言えば,それは”無“
俺にはアイツの事なんて何も分からない
「ユウー、飯持ってきたぞー」
けれど、部屋に帰ってきたアイツは柔らかい表情だった
「…(つか、なんでそんな顔ができんだよ)」
辛いなら辛いと言えばいい
悲しいなら悲しいと言えばいい
なんでコイツは……
その時、ここに来る前に聴いた声を思い出した
『俺の代わりに、───を救ってくれ』
『今も、泣いているだろうから』
あの時は分からなかった
誰を救えだとか、泣いてるだとか
俺には関係ない
俺は破壊者だ
だから知らねーと無かったことにしようとした
けど、もしも
その声の奴がここに連れてきたんだとしたら、俺はソイツを救わねーと帰れないんだとしたら
………面倒くせぇな
多分、俺が救わねぇといけないのは目の前にいるコイツなんだ
だとしたら、さっさと救って帰ればいい
「……?ユウ??」
俺にはやらねぇといけないことがあるんだ
”あの人“を探さねーといけないんだ
今の俺は、それだけしか考えていなかった