鎖に縛られし蝶
□二話
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猫を抱えて家に帰ると、やっぱりと言いたくなるくらいに騒がしかった
「…面倒くさ…」
しかし、今はそんなことを言っている場合ではないのだ
早く猫を温めてやらないと、大変な事になる
そう思った僕は、ソーッと自分の部屋に戻ろうとした
「どちらに行かれてたのです?」
「げっ…松本さん…」
「はぁー、貴方という方は
どうして雨の日になるとそう、ずぶ濡れになって帰って来るんですか?」
頭を抱えて溜め息を吐く眼鏡の男性は、僕の世話係を任されている松本さんといってちょっと小言が煩い人だ
「っわり。つか、何の騒ぎ?
“俺”が抜け出したからじゃないよな?
この騒がしさ」
「……まぁ、貴方の事は私が上手く誤魔化してありますからね」
「おお。毎回助かるわ〜松本さん」
「そういうのでしたらさっさと風呂にでも入って来て下さいな。その猫も一緒に」
「…チッ、バレたか
まぁ松本さんならいっか。他にはバラさないでくれよ?信頼してっから♪」
そこまで言うと、また松本さんは溜め息を吐いて「良いから早く行って来て下さい」と呆れたように言った
こういうちょっとした気遣いとか優しさのある辺りは嫌いじゃないんだけどな、と思う僕だった
「…猫を先に洗ってやるか」
風呂場に着いた僕は、チェックのシャツを腕まで捲ってシャワーを出し温度を調節していると、タオルに繰るんでいた猫がもぞもぞと動き出した
「おっ、丁度いい具合に起きたな」
「…ニャ?(なんだ?)」
「ほら、このぐらいの温度なら大丈夫だろ?」