東離劍遊紀~二振りの剣~

□第一章『訪問者』二話
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さて、今日のメニューはもう終わった

朱明(シュウメイ)から貰った武器もある程度使いこなすまで練習出来た事に満足していると、ふと思い出したかのようにブルりと身が震えた

朝も少々冷えていたが、今は夕方で更に冷え込む

夕食は弟子らが当番制で作っているので私のやる事はただ夕食が出来るのを待つだけ

初めの頃は私が夕食も作っていたが、いざという時に自分達も料理が出来ないと弟子として恥だと言い出し当番制で作ると押しきられた

それに、私の作る料理に興味を持ったそうでそれを作りたいとか

そこは仕方ないと思う

殆どはあまり違いがないが、味付けや初めて見る料理が出た時は皆驚き絶賛していたし

どうにもこの世界の味付けは薄めで私には合わなくて自分流にアレンジしたのが好評

褒められて悪い気はしなくて、私もついつい調子にのって菓子をたまに作って差し入れしたりして・・・これまた好評し、密かに北迷内の名物となっていた

ただのクッキーに紅葉饅頭なのだが、この世界には焼餅はあれどそれ以上の甘味はあまりないそうだ

たとえあったとしても、貧しい者等には手も届かぬ高い値段で売られているらしい

最初は苦戦して危うかった弟子らも今では上出来の料理の腕になって、少しばかり師として誇らしく思う

「師匠、少し宜しいでしょうか?」

「ん?どうした」

部屋で書物を呼んでいると、弟子の一人が扉越しに問いかけてくる声がして視線を扉へと移した

初めての頃は、扉を開けてきていたが私が女と知ってからは扉を開けないようになっている

そもそも、弟子入りした時は皆が私を男と思っていたらしくて性別を知ったのは、弟子の一人であり着替え中の私の肌を見たからだった

無理もないとは思ってあまり咎めはしなかった

ここに来てから私は団子頭にしていた髪をポニーテールにしていたし、自分でいうのもなんだが美人で顔立ちもパッと見では性別など分からない

男性でも華奢で美人な人はいくらでもいる世界だ

それに、私はあまりない胸をサラシで固定しているので男性と思われても仕方ない格好だった

弟子の間では、どう伝わったのか知らないが「とてつもない厳しい環境を生きてきた人」と広まり、私が女である事は墓まで持って行くと言われた

・・・・・なんだか面倒くさそうなので私もそのままにしている

「実は・・・師匠にお会いしたいと言っている者が居まして」

「私に?」

「はい」

弟子の反応からして、私に挑む者ではないだろうと悟る

最近では少なくなってきているが、手合わせを挑む輩はいて私が相手する前に弟子らが代わりに相手をすると言って殆どは門前払いされていた

だが、たまに弟子では敵わない相手も中にはいて

その場合は私が相手する事になっている

けれど、今回はそうでないようだ

「分かった。すぐに行くよ・・・玄関じゃ失礼だし、中に通して稽古場に連れて来て」

「承知しました」

私は何が起こるか分からないと思って竹刀を片手に持って稽古場へと向かった



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