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□過去拍手
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少しだけ冷たくなった風が吹きぬける、そんな朝。
俺はいつも通り、幼馴染である彼女と一緒に学校に登校していた。
「ぜーったい、一護にあたしの事好きにならせてみせるから!」
どうやら、今日の俺は厄日らしい。
「…何言ってやがんだ?お前」
「だから!一護にあたしの事好きになって貰うってゆってんの!」
…意味が分かんねえ。
まず第一に頭に浮かんだ言葉がこれだった。だってよ、考えてみろ。イキナリ朝っぱらからでけえ声でこんな事宣言されたら誰だって戸惑うだろ?つーか、こんな事宣言されること自体がありえねえ話なんだけど…。
「待て待て待て。…自分が言ってることの意味分かってんのか?」
「はぁ?意味なんて一つしか無いじゃん。何言ってんの?」
「いや、お前が何言ってんだよ」
朝っぱらからなんつー疲れる発言をしてくれるんだ。まあ、前々から何かと意味の分からねえ発言をするやつではあったけど。
「いくらなんでも、度が過ぎてんだろ…」
「とゆーわけで!はい!」
俺の目の前に立ち左手を差し出してくる彼女に眉根を寄せれば、何が気に食わないのかむっと口先を尖らせる。
「手!」
「あ?」
「手、繋ぐの!」
「なんでそうなんだよ!」
もうだめだ。ついていけねぇ…。
もはや相手にしていられないと彼女の横を通り過ぎ置いてくぞと一言。
「もー何?ツンデレでも目指してる?」
めげずに、というより気づいていないのかすぐに俺の横に並んだ彼女は俺の顔を覗きこむ。
「目指してねえしうぜえ」
「ほら、やっぱツンデレじゃん!」
「…今の発言のどこにデレがあったんだ?」
なんだかんだ言って相手にしちまう俺は相当なお人好しだと思う。
「うぅん…手繋ぐがだめってことは、腕組む方が良かった?」
「つーか、そういうのは付き合ってからするもんだろ」
「じゃあ付き合ってよ」
「じゃあってなんだよ」
深くため息を零し、ギロリと彼女を睨み立ち止まった。
「な、なに」
「そーゆうのは他の奴に相手して貰え」
「他の人じゃ意味無いの!」
止めていた足を動かし再び歩き出せばごちゃごちゃ言いながら彼女は早足でまた俺の横に並ぶ。
「あー!分かった!!さては一護好きな人居るんでしょ!」
「はあ?なんでだよ」
「だーってオカシイもん。好きな人が居ないならなんであたしと付き合ってくれないの!」
「オカシクねえよ。どっちかって言ったらお前の頭がオカシイだろ」
「失礼な!」
「大体、好きでもねえ奴に好かれてお前になんの得があんだよ」
「?あたしは一護のこと好きだよ」
その発言に思わず足を止めそうになる自分に呆れつつ、どうせコイツの言う“好き”はそういう意味じゃねーと自分に言い聞かせる。
「…そうかよ」
「うわ、せっかくのあたしの告白に対して何その反応!」
もう一護なんて知らない、と膨れっ面でスタスタと先を行く彼女に呆れつつ、その後ろ姿を追い腕を掴む。
「ならもし、俺もお前の事好きっつったら?」
「……思いっきり抱きついてちゅーしちゃうかも」
その発言は予想外で。いや、こいつの発言を予想できた事なんて、正直一度もねえんだけど。
「そういう意味ならそういう意味って…最初っから言えよな」
サラリと言わないで欲しい
(彼女が言った事を俺が代わりにしてやった)