short2

□過去拍手
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好きで好きで


いつの間にか


気持ち、溢れる








こんなにも特別な存在なのだと、気付いたのはいつだろう。


「くらえ!一護ォっ!」


名前を呼ぶというそれだけの行為さえもどこか前と違うように思う。こんなにも胸が熱くて。どこかしあわせな気持ち、に。こうなってしまったのは、いつから?


「ぅぐっ…!また負ッ……くそっ、もう一回だ!」

「あはは!一護弱ーい」


ゲームセンターではしゃぐ二人は周りから見たら、どう映っているの?なんて考えてしまうあたしはもう、この気持ちから逃れられない。でも、こうして馬鹿みたいに笑ってられるのはあなたにウソをついているから。伝えてしまえば簡単なこの想いを、隠しているから。


「おらっ、どーだ!」

「わぁっ!?一護大人気なーい…女の子相手に本気んなってる〜」

「うるせえな、真剣勝負に男も女も関係ねえんだよ」

「たかがゲームでしょっ…あぁー!?」


一瞬一護の方を向いたその隙をつかれ、あたしの画面にはK.O.と表示されていた。勝ち誇った顔の一護にぶすっとした表情を向け「ズルいー!」と言って一護の腕を揺さぶる。すると「分かった分かった!俺が悪かったよ!U.F.Oキャッチャーで何か取ってやるから機嫌直せって」そう言って椅子から立ち上がる一護の姿。その発言に目を輝かせ本当!?と聞き返せば頭を掻きながら一つだけだからな、と笑う彼がいた。


「やったー♪一護大好きっ」


それだけ言い残しぱたぱたとU.F.Oキャッチャーのある場所へと向かう彼女に、一護は細く溜息を吐く。


「ったく、調子いい奴…」


そう言う一護の表情はどこか穏やかで、切なげでもあった。だが当の本人はどれを取って貰おうかとU.F.Oキャッチャーに張り付いていて全く気付いていない。暫く決まらなそうなのが目に見えて、取敢えず一護は喉の乾きに気付き少し離れた位置にあった自販機に向かった。




「うーん…どれにしよっかなぁ…」


せっかく一護が取ってくれるって言ってるんだから。ここは慎重に選ばなくちゃ…――と、一人悩んでいたらいつの間に後ろにいたのか、肩をポンポンと叩かれた。


「ん…?」


くるりと振り返れば、3人組のチャラチャラとした男がにっこりと笑っていた。


「それ取って欲しいの?俺が取ってあげよっか」

「あ、いや…えっと」

「いーよ遠慮しなくって!それ取ってあげるからさ、一緒に遊ばない?」

「え…あの…っ」


困ったようにおどおどしていると、一人の男があたしの腕を引いた。


「ね?いーでしょ?」

「やだ…!――」


反射的に腕を振り払い後ろに後退すると、すぐ後ろに立っていた人物とぶつかった。


「おい」


謝りかけて顔をあげたら、凄い剣幕で3人組の男に睨みをきかす一護の姿があった。さすがにその表情にはあたしでもビク!と肩が強張りドキドキと心臓が速くなった。


「俺の女に触んじゃねえ。次なんかしやがったらその指へし折るぜ」


ぐっと肩を引き寄せられ、一護のあまりに唐突過ぎる発言に一瞬思考回路が停止した。だがすぐにその言葉の意味を理解したあたしは、一気に耳まで真っ赤に染まる。


「チッ…男連れかよ」

「行こーぜ」


そそくさとどこかへ行った三人組の男の背中を最後まで見届けると、一護はその視線をあたしへと向けてきた。


「お前なァ…!」

「ご、ごめんなさい…!」


慌てて謝れば一護はふと息を吐いて目を伏せ、元からある眉間の皺を更に深くさせ口篭った。


「あー、いや…悪りィ。一人にさせちまって…怖かったろ?」

「え、そんな…っ、一護は悪くないよ!あたしがふらふらしてたのが悪いんだし…」


説教されるのかと思いきや、予想外にも謝ってきた一護の優しさと、正直連れて行かれるんじゃないかという恐怖感が今になってから一気に押し寄せ。思わず目元に涙が溜まるのが分かり慌てて俯く。泣いちゃだめだ、一護の前でなんて泣いちゃ…


「そ、それに…一護は助けてくれたし、その…」


ありが、と。消え入りそうな声でそう言ったら、一護はぐりぐりとあたしの頭を撫でてくれた。


「気にすんな」


それより、決まったか?そう言ってU.F.Oキャッチャーを指差す一護に、笑顔を作って。…あなたを想うほどあたしは強くなっていくの。愛しくて、苦しくて、この胸に詰まる何かが取り除かれる日がいつかくるのかなんて分からないけれど。

真っ直ぐに、真っ直ぐに、あなたへと。


(ってゆうか、一護さっき…俺の、女…って…)(あ、いや、あれはホラ、あれだ!なんつーか…ッ!…な?)(…??)(と、とりあえず、まあこれ買ってきたから飲めよ!)(わ!ありがとうっ!)((…助かった!))







BGM:KISS〜恋におちて...冬〜/MAY'S



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