short2

□過去拍手
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(切/27巻ネタバレあり)


‐‐‐‐‐‐




こんな、ことなら


いっそのこと








君のその表情に、一番最初に気付くのはいつだってあたしの筈なんだ。

ねえ、それでも。どうしてかな。…どうやっても、君に届かない。


「一護ッ!!」


階段を上って廊下を歩き、教室へと向かっていた時に不意に竜貴の叫ぶ声が聞こえた。何事かと思い、足が思わず止まる。

竜貴が一護を呼んだ後からの会話は良く聞こえないが、一護へと向けられた竜貴の目は鋭く。2人の間に入れそうに無いのはすぐに分かった。


気になり、竦みそうな足を無理矢理に動かし、一歩一歩近づく。一護も竜貴も、あたしには気付いていないようで。


「大体ホントにいなくなったのかよ?もっかいちゃんと捜して…――」


言い掛けた一護の胸倉を竜貴が掴み上げるのが見え、直後には「ふざけんなっ!!!」と叫ぶ竜貴の声が響き渡っていた。


「っ…な…!‥竜貴……!?」


止めようとして走り出したあたしの足は、竜貴の一言で止まった。


「…あんた…あたしが何も知らないと思ってんの…?」


ごくりと生唾を飲み込み、竜貴の横顔を見て唇を噛んだ。


「見えてんのよ。黒い着物のあんたも…ソレ着て妙な連中と戦ってるあんたも…!」


一護の胸倉を掴んだまま、訴えかけるような瞳を向ける竜貴に思わず涙で視界が霞んだ。


「もういいだろ…隠してること全部……あたしに話せよ」


目の下に隈を浮かべた一護の顔はそれでいて何かを覚悟したような表情だった。



「…お前には…関係無えよ」



周りのどよめきも、風で窓がガタガタと揺れる音すらも消えて。廊下一杯に、一護のその声が響いた気がした。


…何故だか、竜貴だけに向けられた言葉だとは思えなかった。



ガシャァン…!!!


直後、一護は竜貴に殴られ窓ガラスに頭を打ち付け、その拍子に窓ガラスは粉々に飛び散る。


「い…や…やめっ……」


震えて声が出ない。どうして。ねえ、竜貴。ねえ…一護。もう、お互いを…傷付け合わないで――



「あたしはあんたの何なんだよ!!!ツレじゃねえのか!!仲間じゃねえのかよ!!!」


啓吾に腕を抑えられながらも、必死にそう叫ぶ竜貴に一護は口元についた血を拭いながら目を見開いた。


「あんたが困ってるトコ何回も見たろ!!何回も…助けてやったろ!!そのあたしに…」


叫び散らしていた竜貴の声は急に弱弱しくなり、脱力したように顔を下に向ける。



「…あたしに…隠し事なんか…すんじゃねーよ……バカヤロー…」



ドクン…

心臓が一度大きく鳴り、涙が自然と頬を伝った。


ねえ、あなたは何を見ているんですか。何をしようとしているんですか。…答えてなんて、きっと君はくれない事。分かってる。でも、でもね、一護。それでもあたしは。あたし達は。



「…悪い。ケイゴ、水色。たつきを頼む。それから…」



きみが、すきだから。



「…俺に関わるな」



どんな言葉を吐かれても、きっと信じて待ち続けてしまう。君の本当の姿をあたし達は知ってるんだよ。ねえ、気付いてる。君は、それに気付いているの。


ふと竜貴たちに背を向けた一護がこちらに向かって歩いてきた。



涙で濡れた頬からはいくつもの雫が顎を伝って流れ落ちて。あたしの存在に気付いた一護はまずその頬を伝う涙を見て一度目を見開くと、すぐに眉間の皺を深くし目を細めた。



「……お前も、聞いてただろ」


ポツリと呟かれた一護の言葉に何も返せずにいると、あたしへと向けられていたその視線はすぐに逸らされた。



「お前も、俺に…――」


耳を、塞ぎたい。でも、体が、腕が、震えて、動かない。まるで立ったまま金縛りにでもあったみたいに、体の全神経が言う事をきかなかった。

立ち止まっていた一護はすぐに歩を進め出し、あたしの横を通り過ぎる。



「――関わるな…」



君のこの言葉が、精一杯のあたし達への優しさだと、気付かぬまま。


(崩れるように廊下に膝をつき、気付けば声を上げてあたしは泣いていた)



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