short2

□過去拍手
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この感情も何も全て


無かった事に出来たなら








貴方と出会ったのは、ほんの数年前。

貴方と過ごした時間は、ほんの数ヶ月。


何度となく笑いあって。

何度となく下らない事で喧嘩して。


最近は笑う事より、すれ違って喧嘩する事の方が多かったね。

だから、かな。


貴方の手を、離してしまったのは。




一人ポツリとベッドの上に座り、携帯を握り締める。

握り締めていた携帯を開いてアドレス帳にあるまだ消せない名前をジッと見つめた。


「一護…」


名前を口にしたら、なんでかな。

また悲しくなってきた。


二人が過ごした時間は、貴方にとって幸せなものでしたか?


まだあたしの中には、貴方の姿がハッキリと浮かんで。


こんな風に終わってしまうなんて思っても無かったの。

だから、何度も、ぶつかり合って。


君に離れて行ってなんて、欲しくなかったの。

ただ…あたしの想いを、分かって欲しかっただけなの。


どんどんと離れて行ってしまう貴方を、引き止めたかっただけ。



…今更どんな言い訳も、意味を持たないのだけれども。




〜♪


「…っ」


握り締めていた携帯が設定していた音楽と一緒にバイブで振動する。

彼、専用の音楽が部屋一杯に鳴り響いて。


どくん、と心臓が高鳴った。


期待と共に、不安が押し寄せてきて。

暫くは画面を見つめるだけで精一杯だった。


届いたばかりの“黒崎一護”と表示されたメールを開き、まだ読んでもいないのに、涙が頬を伝った。

歪む視界の中、必死に文字を読み取り、思わず声が漏れた。


“急にごめんな。今から会えねぇか?”


返事なんて、決まってる。

あたしも貴方に会いたい、声を聞きたい、


…願わくば、体温を、感じたい。


“大丈夫だよ”


短く返事を返せば、すぐに電話が掛かってきた。


「…はい」

「外、出れるか?」


部屋のカーテンを開け、窓から外を見れば人影が見えた。

急いで部屋を飛び出してドアを開ける。


パチン、と携帯を閉じる彼の姿が視界に入って、足が震えた。


「…泣いてたのか?」


頬に手を伸ばして、親指で前みたいに涙を拭ってくれる一護の手が温かくて。

また溢れ出しそうになる涙を堪えるために唇を噛み締めた。


「なんの、用…?」


俯きがちにそう声を発すれば、離れていく彼の手。

それだけの事に胸は酷く痛んだ。


「俺さ、」


次の言葉を待っている時間さえも、もどかしい。


「何を今更って…思うかもしれねぇけど」



「お前の事、やっぱりすげぇ好きなんだ」



(溢れ出した涙を誤魔化すように“ばか、”と呟けば)

(強く、強く抱き締めてくれる余りに愛しすぎるあなたがいた)



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