short3

□さよならを、2回。
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ざぁぁぁぁ――

雨が降る。今朝は晴れていたのに。最近の気候は変化が激しく朝やっていた天気予報とは異なる事が多かった。今日もまた例外では無く。見事に予報は外れ、雨に打たれる。あーあ、と1人声を漏らすも、どうにも走る気にはなれない。このまま雨に打たれながら歩いて帰ろう。


「……あの日、みたい」


いつの話だったか。そんな事はもう忘れてしまったけど。あれは今日みたいな雨の日。君とさよならをした日。君と過ごした時間だけは本物で。消える事は無いのだけれど。どうして、耳元で囁く君の声が頭からはれない。もう二度と、聞く事の無い声。聞いてしまったら、きっとこの決断は揺らいでしまう。貴方を忘れるという、切なくほろ苦い覚悟。


「一護…」


さよならをしたのは、あたしの方。それでもずっと忘れられずにいた。引き止める一護の手を払ったのは、あたしなのにね。あの日の痛みを忘れる事はきっと無い。いつまでも未来が見えない事が、怖かったのよ。臆病だと、罵ってくれて構わない。…あたしがいくらそう思っても、一護の事だから、自分を責めるのかもしれないけれど。


「何よりも、大事な存在だったよ」


一護さえ居てくれれば、他には何も要らなかったけれど。そう思えば思う程、一護にもあたしを見て欲しくて。汚い感情だけが渦を巻く。それが、どんなに苦しいか。きっと君には分からないまま。とは言っても、こんな感情を分かってなんて、欲しくは無いけれど。君にこの感情が伝わってしまう前に、さよならをしたかったの。


「ごめんね」


いつの間にか止まっていた歩を、ゆっくりと進めた。ぴちゃん、と足元の水溜りが音を立てた。やけにその音が響いて聞こえて、まるであたしを励ましてくれているようで。苦笑を漏らし、天を仰ぐ。


「…さよなら」


もう、振り向かないよ。




(一度目は君に別れを告げ、二度目はこの想いに別れを告げた)



BGM:RAIN OF TEARZ/詩音



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