小説(短)
□手を掴んで。
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今は夜。森の中に1つの灯りがあった。
泊まりのクエストなのか、そこで野宿しているようだ。
見張り番はユーリのようで、あとの3人...ルーク、エステル、フレンは眠っていた。
(暇だなぁ...)
この四人の中では最年長のユーリが自分から見張り番をやる、と買って出たのだが、やはり暇なもので。
(剣でも手入れしとくかな)
どこからとなく布を出して、自分の愛剣の手入れをし始めた。
(...今日のルーク...やばかったな...上目遣いが...)
何を考えているのやらユーリは今日クエストに誘ってくれたルークの仕草を思い出して1人優越感に浸っていた。
元々今日は違うクエストを入れていたのだが(といっても採取の)ルークのおねだり(殴)が俺を動かして元のクエストを破棄しルークに着いてきた。
ルークはユーリのことを気に入っているらしく、どうしても、と頼んだ。
最初はユーリの貴族嫌いが発動してて、ルークには当たりがきつく、ルークもそれを良くは思ってなくて2人とも好印象を持っていなかった。だけどルークの良い人柄をユーリが知っていって、なんとなく今みたいな関係になっていた。
ユーリはルークの寝顔をまじまじと眺めていた。大方可愛いなどと言うことしか考えてないのだろう。
いくばか時間が経ったころ……
ルークが何か呟いた。
寝言か?なんて思ったが、そうであったらどんなに良かったか。
ルークは魘されていた
「……めん…さ……ごめ……なさ…」
「ルーク…?おいルーク!」
どんなに揺さぶってもルークは固く目を閉じたまま ごめんなさい、を繰り返していた。身体は震え悲しげな顔をして…
「ごめんなさい…っ!」
ルークは謝っていた。
何に?誰に?何故?
ユーリは疑問が尽きなかったがそれよりもルークを何とかしなければこれ以上は危ない。
「ルーク聞こえるか。落ち着け、深呼吸しろ。」
ユーリはルークの頭を撫でて手を握り声をかけ続けた。
「ルーク、大丈夫だ俺はここにいるぞ。…ルーク…」
「……どうかしました?」
エステルが起きたようで、ルークとユーリの状態を見て不安げな顔になった。
「ルーク…魘されているんです?大丈夫です?」
エステルは立ち上がりルークの開いていた方の手を握ってルークの身を案じた。
「ルーク大丈夫、大丈夫ですよ。」
「ぅ……ぁ……ユー…リ…?エステ…ル…」
「ルーク!大丈夫です?魘されていたんですよ!心配しました!!」
エステルは抱きつかんばかりに身を乗り出しルークに言葉をかけた。
「え…俺魘されてた?まじか…」
「…覚えてないのか?」
「え、うん…
あっ!ごめんな!俺のせいでなんか迷惑かけたみたいで…2人とも手…握っててくれたんだな…」
「迷惑なんて誰が言ったよ。俺が勝手にやったんだ。そんな気にすんなって」
「そうです!迷惑なんかじゃないです!いつでも空いてますからね!」
「あ、ありがと…」
ルークは照れながらも2人に礼を言い、一件落着となった。
その後見張り番をフレンと交代し、ユーリは眠りに落ちた…