Ruckseite

□like or love
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「ちっ、…つーかてめぇ、俺と付き合ってるんだろ?」
俺から視線を外して舌打ちしたあと、また俺を睨みつつそうぼやく男鹿。
あぁ…そんなことになっていたね…。
すっかり失念…うっかり貴之っ。
ってゆーか、大体…付き合うっつっても俺たち何か変わったっけ??
一応、付き合おーか、みたいな話をしたのは数ヶ月前だって事は覚えてる。
アメリカから帰ってきて、石矢魔がヤベエことなってて、それが終わったあと。
そこそこいつも通りの生活になってきて、いつも通り男鹿と男鹿の部屋でごはんくん読んでた。
したら男鹿の方から告ってきたから、じゃあまあ付き合いますかーみたくなったんじゃなかったっけ。
正直、男鹿の事は好きでも嫌いでもない…いや、気にかかる存在ではあったか…だったから、付き合うってのもまあいいかって結論付けたんだが。
てか、付き合う?
付き合うってなんだ?!
「あのぉ、男鹿くん??そもそもお前が言う付き合うってなによ?」
「あ?」
1人で悶々とし過ぎて男鹿に哲学めいたことを聞いてしまった。
男鹿も男鹿でなに言ってんだ?みたいな顔してるし。
「あー…よく分かんねえけど、お互い好きだーって思うのが付き合うってことになるんじゃね?」
「ピュアか!!!!」
「あ”ぁ?」
脊髄反射で突っ込んでしまった。
思い切り睨まれたし、わりぃ。
「あーごめんごめん、つい」
顔の前で右手だけで謝っておいた。
こういう俺の軽さに男鹿は慣れているから、すぐに眉間の皺は消える。
「つーか、大体よぉ。付き合ううんぬんの話は、お前がそういうからだな…」
「えっ?あ、そうだっけ?告ってきたのは男鹿だろ?」
「告って…ああ、好きだっつったのは俺だけど。そのあと、じゃあ付き合うかーって言ったのは古市だったじゃねえか」
「え…、そ、そうだったか…」
やばいな、全然覚えてないじゃん俺。
つーか、ほぼ2人きりの状況で好きだって言うってことは、男鹿自身も付き合うとかちょっとは考えたんだろ?
「……そこんとこ、どうなんだよ?」
「いや、俺はあん時、お前に好きだって言えれば別に良かったけど?」
「はぁぁ????!!!!」
今度は俺が男鹿を睨む番になった。
「いや、ちょっと待て、お前、あん時、俺に好きだって言ったあと、どうする気だったんだよ!あぁそうとでも言えば良かったのか!」
「いや、知らねえよ。俺は、小学ん時からお前、巻き込んでるし、最近は悪魔絡みで死にかけたりとかして、古市の自業自得っちゃあ自業自得なとこもあっけど、結局俺の横に居てくれるんだなって思ったらなんか…あぁこいつ好きだなって思ったから言っただけで……、どうした?」
「も、もういいです…」
聞いてて恥ずかしくなってきた…。
なんだこいつ。
ムカつくな。
「てか、それだとマジで俺のこと好きだけど、それだけって感じじゃん。俺の早とちりかよー」
ため息と同時に頭が落ちる。
なんだよ、よく分からん数ヶ月を過ごしたってことじゃん。
そんな俯く俺の頭上に男鹿の声が降ってきた。
「?…なんで?」
「なんでってお前な…」
「お前も俺が好きだから付き合おうぜってことじゃないのか?」
俺はもうほぼほぼ呆れ返った眼差しを男鹿に向けた。
「そんな純粋の塊で付き合うような奴は今時いないって。付き合うってのはさー…"友達"から"恋人"に変わるんだぜ?likeがloveになるわけよ」
「はあ…?」
「いや分かんないだろうな。よーするに友達として好きってのが、こいつを恋人にしたいって、自分のものにしたいってゆー好きになるわけだよ」
「自分のものにしたい…?」
ところどころ繰り返すな、恥ずかしいから。
「その子から他の男の話題が出たり、自分じゃない他のものに楽しそうにしてる姿にちょっとムカついたりして、俺を見てて欲しいって思うつーか…。友達が自分以外に興味があって当然だろ?だから別にどーとも思わないじゃん?」
「あぁ…」
「なんだよ、あぁって。いや、わかってないね。分かってないから、こんなことになったんだかr…」
だけど俺の頭は次の男鹿が放った言葉で思考を停止することになった。
「いや、ほら、お前がさっき姫川の話した時、俺様が遊びに来てやったのになんで姫川の話すんだよって思ったし、俺がいんのにAV観てんだなーって思うとその時間、俺に構えやって思うし。分からなくはないなと」
無言。
「それはお前、ジャイアニズムだな」
「は?」
「お前のジャイアン気質」
「はあ?」
男鹿が怪訝な顔をしているのも無理はないが、俺の方は逆にすごく冷静になっているような気がする。
「なんだよお前、どっちなんだよ。俺にそのライクだのラブだのの話したいじゃねえのかよ。どこにジャイアンいたんだ?」
「知らねえよ。男鹿の場合はジャイアンなんだよ。お前のものは俺のもの、俺のものは俺のものって思って生きてんだろ」
「…それだと古市、お前、俺のものってことになるじゃん?」
「?!」
はああああ???!!!
なんだと男鹿がちょっと賢いだと…!
いつの間にそんな思考回路を身につけたんだ…。
「う、うそだろ…」
「古市はアホだアホだと思っていたが、本当にアホだな」
そう言ってけらりと笑う男鹿。
俺はアホじゃねえと反論したいが思考が動きたくないって言ってる。
「そ、そうなるとなんだ…男鹿…お前が言う"好き"は…ら、loveなのか…」
「そうなんじゃね?」
「そうなんじゃねって…また適当な…。じ、じゃあ、男鹿、お前俺にどこまでシたいんだ?」
これとんでもない、やぶ蛇じゃないか?
突くべきじゃなかった。
と、思うが口も止まらなかった。
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