おそ松さん
□死んだのに死ねない死体カラ松の懺悔
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その日の夜もまた、松野家の住人は誰もカラ松がいないことに気付く者はいなかった。チョロ松以外は誰も……。
兄弟達はパジャマに着替えて布団を敷き、それぞれ眠る前のほんの僅かな時間を各々の好きなことに費やしていた。
おそ松と十四松はプロレス遊びをし、トド松は自分の寝床でスマホを弄り、一松も一番右端の自分の寝床に潜り込む。チョロ松は明日のライブに行く準備をしていた。
チョロ松は今朝の出来事を誰にも話していなかった。カラ松に口止めされていたので、誰にもカラ松のことを話さなかった。もし話をしても信じてもらえるとは思えなかったし、今さらカラ松のことを話しても何ができるわけでもない。既に終わってしまった出来事だと割り切っていた。
「……寒い」
一番右端で眠っている四男が不機嫌そうに呟いた。
一松の小さな一人言は、おそ松と十四松の喧騒に掻き消されたが、チョロ松の耳にしっかりと届いていた。心臓を素手で鷲掴みにされたような衝撃を受けて、チクチクと小さく胸が痛み出した。
しかし、チョロ松は聞こえなかったことにする。
「はい、みんな!もう寝るよ」
学校の先生のようにパンパンと手を叩いて、十四松とおそ松を寝床に追いやり、部屋の電気を消す。
じゃ、おやすみー。
それぞれ、口々に就寝の挨拶をする中、消え入りそうな声で、クソ松……と誰かが呼ぶ声が聞こえた気がした。しかし、それはきっと気のせいだろうと自分に言い聞かせてチョロ松は目を閉じた。
ふわふわと意識が微睡んできた頃に、唐突にカラ松が光の届かない暗い海に落ちていく光景が頭に浮かんできた。おやすみ、カラ松、と小さく呟いてチョロ松は眠りに落ちた。
End.