おそ松さん

□松ネタ吐き出し
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・ジェイカラネタ。
・なごみネタとは違います
・ならず者ジェイソン×動物パジャマのショタカラ
・死ネタ表現あり
・中途半端

以上でも構わないという方だけ、先に進んで下さい









 親に捨てられて小汚い浮浪児として路地裏の野良猫と共に生きてきた。

 体を売って寝床と金を確保し、 金がなくなれば盗みやスリをした。猫のように身軽な体は逃げるのに非常に役立った。食うものが無くなればドブネズミのようにごみ捨て場で残飯を漁り、人としての尊厳を溝に捨てて生きてきた。まったくろくでもない生き方である。

 そんなろくでなしとして生きていた自分に良くない仲間が出来た。

 間抜けな金持ちをターゲットにスリをして生きていると、どういうわけか、人殺しや強盗を生業にしているゴロツキ共に気に入られてしまった。お前の荒んだ目が気に入っただとか、身軽な身のこなしが良いだとか色々言われた。とりあえず、誰かと吊るんでそのおこぼれにありつくのも良いだろうと判断してゴロツキ共の仲間となった。相手が人殺しだろうと何だろうと、今日の飯と寝床が貰えるのなら、特に不満もない。道徳や良心では飯は手に入らない。

 そして、ゴロツキ共に可愛がられながら、ナイフの使い方や効率のいい盗み方、獲物の見極め方などを教わった。仕事着として与えられた子供服を着て金持ち共から財布をスる毎日だった。ヤツらが「仕事」に行くときは、足手まといになってしまう僕はたいてい留守番としてアジトで待たされ、帰ってきたゴロツキ共からおこぼれをもらう。大抵は玩具だったり、果物だったりするけれど、一度だけ宝石を貰ったことがある。よほど実入りの良い日だったらしく、宝石に目を奪われていた僕にひとつだけお前にもやるよと青い宝石をくれた。胡桃のような大きさの青く綺麗な宝石だった。それからその宝石は僕の唯一の宝物となった。

 ある時、酔ったゴロツキのリーダーが仲間を殺した。酒瓶で仲間の頭を打って、割れた瓶で土手っ腹をぶっ刺した。

 部屋の隅でガタガタ震える僕の視線に気付いた男は、濁った瞳に狂気を浮かべて「お前まで俺に逆らうのか!」と分厚い両手で掴まられる。そのまま首を捻り殺されそうな力で締め付けられ、息が詰まりそうな苦しさに喘ぎながら、ゴロツキの腰に刺さっている凝った装飾がされたナイフに何とか手を伸ばし、それを引き抜きいて力いっぱい心臓に一突き入れた。野太く苦悶の声を上げながら脇にのけぞった男に覆い被さり何度も何度も滅多刺しにした。

 中途半端に生かすな。
 完璧に息の根を止めろ。
 そうしないと、激怒した男に返り討ちにされるぞ。

 恐怖で頭の中がいっぱいになり、何度も何度ももう動かない男の体にナイフを振り下ろした。

 男を殺した後はシャワーを浴びて血を洗い流し、新しい服へと着替えた。部屋中の有り金を全て回収し、一番強そうな武器と顔を隠すホッケーマスクを拝借してからアジトを出た。

 それから、街では正体不明の通り魔が現れた。

 ホッケーマスクの殺人鬼ジェイソン。
 正体不明の強盗殺人犯である。

 人を殺して開き直った僕は道行く人を襲い、金品を奪う殺人鬼になった。はいはい屑ですよ。一人殺してしまえば二人殺すのも大して変わりないんだよ。

 ドゥルンドゥルンと電動ノコギリを低く唸らせて何人もの人間をバラバラにする。殺した人間から金目の物を奪い、一日一日をしのぐ。そんな不安定なその日暮らしを送っていると警察に追われるようになった。

 そして僕は町を出ることにした。

 行くあてもないまま、とりあえず町外れの森に身を潜めることにした。

 暗い森の奥にチェーンソーを片手に進んで行くと人のいない古びた洋館が建っていた。

 人気のない静かな佇まいにゆっくり休めそうだと判断して足を踏み入れた。ついでに金目の物がないかという打算もあり、館内をひと通り見て回ることにする。灯りのない無人の邸は床には埃が積もっており、長い間誰もこの屋敷に足を踏み入れることがなかったことを物語っている。

 薄暗い場所で生活していた僕は、夜目が効くので玄関広間の壁や床に染み付いた血の跡がはっきり見えた。

 血など僕には見慣れたものだったので大して気にせずに、スタスタと玄関の大広間を左に進んで食堂に入る。そこもテーブルクロスは床に落ちており、椅子や燭台は倒れ、床や壁には血痕が残っている惨状であった。

 食堂の奥の台所も酷い有り様である。調理器具や食器は床に散乱していた。食糧は全て何者かに持ち出されたのらしく、食べ物の類は何もなかった。何にも収穫を手に入れることが出来ずに、舌打ちして台所を後にする。食堂や台所の他に使用人の部屋や、居間や寝室、使用人らしき簡素な部屋や、他に書庫を見て回ったが、どの部屋も台風でも来たのかというほど荒らされており、金目の物はおろか食糧も見つからなかった。

 一階を見終えたので、二階に向かうことにした。

 玄関の大広間に戻って階段を上がる。二階も薄暗く先の見えない長い廊下をゆっくり歩く。二階の廊下にはいくつもの窓が並んでおり、夜の闇と漆黒に染まった木々が見える。一瞬、窓の外に赤く光る何かが見えたような気がした。そっと窓に寄り、外を見渡すが特に何もない。気のせいかと思い、窓から身を離すが、何者かの気配を感じる。まるで、警察に監視されているような嫌な視線が絡みついてくる。



「……」



 手にしているチェーンソー強く握って気を引き締める。まとわりつく視線から逃れるようにすぐ背後の部屋に入ると、そこは子ども部屋だった。

 クローゼット。
 小さなベッド。
 チョコンと部屋の中央に置かれた丸いテーブルと椅子。
 床に散らばるクレヨン。
 薄汚れた猫のぬいぐるみ。



「……」



 子どもがいたのか……。

 何かに押し入られて殺されたのだろうと思っていたけれど、子どももろ共に皆殺しにされたのかと思うと、後味の悪い想いが込み上げてきた。

 苦い思いで床に転がるぬいぐるみを見つめていると、衣擦れのような小さな物音がした。視線を上げて物音のした方に振り返ると、クローゼットの中で誰かが身動ぎ息を飲む気配がした。
まさか、こんな森の奥深くの廃屋に誰かいるとは思わなかった。きっと、自分のようなろくでもない奴に違いない。ならば、ぶっ殺しても構わないだろう。そうだ。そうしよう。襲いかかられたり、面倒なことになる前にさっさと殺してしまおうと、チェーンソーわ片手にそっとクローゼットの扉を開くと、中には小さな子どもが隠れていた。



「……は?」



 どうして、こんな所に子供が?

 クローゼットの中で身を縮こませて隠れていたのは、青い狼の着ぐるみパジャマを着た幼い少年だった。凛々しいを下げて涙に濡れた瞳で僕を上げている。



「……」

「……」



 黙って見つめ合うこと十秒間。
少年の目から涙が零れ落ちた。



「…………っ、……ひっ、ぐ……」

「……」

「殺さないで……死にたくない……やだぁ……やだよぉ……おとうさん……おかあさん…ひっく、…」



 顔を覆ってしくしくと泣き始めた子どもを前にして、途方に暮れる。何も言わずにそっとクローゼットの扉を閉めた。

 そうして、閉めてから気が付いた。

 廃屋に子供が一人でいるなんておかしい。何者かが監視するような視線といい、この廃屋は異様である。元々屋敷の住人が惨殺されたらしい屋敷のようなので何らかのいわく付きの建物なのだろう。とりあえず、子ども部屋には金目の物もなさそうなので、部屋を後にすることにした。ざっくりと館内を見て回っても金目の物がなさそうならおかしなことになる前に屋敷から出て行こう。

 次の部屋へと向かおうと子ども部屋を出ると廊下に明かりが灯っていた。



「は?どうなってんだ……?」



 ありえない光景に驚いて出てきたばかりの子ども部屋にも戻ると、そこも明かりが灯っていた。クローゼットから這い出るように四つん這いになっている狼パジャマの子どもが、再び部屋に戻ってきた僕をぱちくりと瞳を瞬いて見上げている。



「お前、何したの?」

「え……?」

「いいから答えろ。クソガキ」



首を傾げる子供の頭の上にチェーンソーを翳すと、子供は顔を真っ青にして首を振る。



「ひぃっ!し、知らない!知らない!何にもしてない!するわけない!」



 殺さないでと縋って泣く子供はとても嘘を吐いているようには見えなかったが、一応脅しをかけるつもりでチェーンソーを鳴らしてみると、恐怖と緊張に張り詰めていた「ヒィッ」と情けない声を上げて子供は失禁した。
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