おそ松さん

□松ネタ吐き出し
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チョロ松が顔を洗って、鏡を見てみると、そこに映る自分がおかしなことになっていた。

「え?」

目の前には月桂樹の冠をかぶり、真っ白な衣を身につけた自分の姿が映っていた。

「何だこれは!?俺…朝っぱらからラリってンのか!?」

信じられなくて、もう一度目を凝らして鏡をみると、そこにはいつものパジャマの自分が映っているだけだった。





◇◇◇





朝御飯を食べに居間に入ると、今度は兄弟が人外になっていた。卓袱台を囲む人外共を目にして、チョロ松は部屋の入り口で呆然と立ち尽くす。

(一体、何がどうなっているんだ?)

スーツ姿のおそ松が、立ち尽くすチョロ松に気付き、赤い瞳を細めてニヤリと笑う。

「遅かったじゃ〜ん。チョロ松〜。先に飯食ってンぜ」

おそ松の頭には赤と黒の縞模様の角を二本生えており、背中には真っ黒な蝙蝠の翼が付いている。腰のあたりを尻尾らしきものがフヨフヨと揺れている。

紛れもない悪魔である。

その悪魔の向かいには、光輝く輪光を頭に浮べ、真っ白な衣服を身に纏った弟がいた。しかも、背中には七対の純白の翼がある。そんじょそこらの天使ではない。大天使である。大天使・十四松が納豆をぐるぐるとかき混ぜているのだ。

天使の両隣には、背後の壁に巨大な鎌を立て掛けて味噌汁を啜る黒いローブを着た死神のような一松と、二対の黒く染まった天使のような翼を生やした黒服の堕天使らしきトド松が座っている。

そして、トド松の隣に座って鮭をほぐしているのはパジャマ姿のカラ松だった。

「何でテメェだけいつも通りなんだよ!!!」

思わず、カラ松を指差してツッコんでしまった。

「…………」

「「「「「…………」」」」」

物言わぬ兄弟の視線が突き刺さる。

(…いや、だっておかしいだろ。何で、アイツだけ変わってないんだ?)

そして、カラ松を指差す素肌をさらけ出した腕を見て、気が付いた。いつの間にか、自分の着ている服がまたパジャマから純白の衣に変わっていた。

顔を上げて、卓袱台囲む兄弟を見ると全員、パジャマ姿に戻っており、箸や茶碗を片手に不審そうにチョロ松を見ている。

どうやら、彼らは何も気付いていないようだ。

カラ松も、首を傾げながら呑気に朝食を食べている。

「チョロ松ぅ〜。お前、朝っぱらからシ●シコしてて脳味噌とろとろになっ…ガァッ」

とりあえず、足元に落ちていた新聞をバカ長男の顔面に投げ付けて、自分の席に着いた。

「いただきます」

味噌汁を啜りながら、もう一度、カラ松を見ると、目と目が合った。

「何か、顔に付いてるか?」

「…いや」

サッとカラ松から目を逸らして、鮭をほぐす。

ふと、視線を感じて顔をあげると、斜め向かいの十四松がこちらを見ている。何故か、先ほどの大天使の姿に戻っていた。

思わず、手から箸が転げ落ちた。

「…十四松」

「なに?チョロ松兄さん」

「…お前」

何で、天使になってんの?と、言いかけてやめた。

今朝は、なんだかおかしな朝だ。もしかすると、自分は疲れているのかも知れない。

今日はハロワに行くのはやめて、家の中でゆっくり休んだ方が良いのかもしれない。

「いや、やっぱり何でもない」

十四松から視線を外して鮭を食べる。食事の間、どういうわけか知らないが、大天使姿の十四松が自分をガン見していた…気がするけれど、何てことない。それも、きっと気のせいだ。日頃からバカ長男やイタイ次男などにツッコンでいるせいで、心が疲れているんだ。多分。そのせいで、幻覚まで見えるようになったんだ。多分。

今日は一日、ゆっくりしよう。

一心不乱に白米を口に入れながら、チョロ松は頭の中で今日一日の予定を組み立てた。




松野チョロ松は知らんぷり


3月3日のチョロ松の日にむけての記念SS
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