おそ松さん

□松ネタ吐き出し
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・死ネタ注意
・カラ松以外の兄弟が死んでしまった話
・出だしの旅行の部分が他の没ネタと同じ
・カラ松が皆に置いて行かれた話
























 ある時、長男の提案で熱海へ旅行に行くことになった。

 ニート六人の男だけの旅行である。六つ子達は今回の旅行を非常に楽しみにしていた。しかし、当日の朝、六つ子の次男・松野カラ松は寝過ごしてしまい、兄弟に置いていかれてしまった。昼前に飛び起きて、自分以外の兄弟が誰もいない部屋に気付き、カラ松は非常に焦った。

 転がるように階段を降り、一階の台所へと駆け込んだ。息を切らせながらパジャマ姿で現れたカラ松を見た母親は「あら、あんた皆ともう行ったんじゃなかったの?」と驚いた顔で言われてしまった。

 その言葉に、自分が置いていかれてしまったのだということに気付いた。

 実は今までにも、朝から皆と何処かへ出掛ける際に、寝過ごしてしまっては誰にも気付かれずに置いていかれることがあったのだが、今回もまた兄弟はカラ松がいないことに気付かずに旅行へと行ってしまったのだった。





「あ〜あ、俺も皆と行きたかったなぁ…」



 今頃、彼らは熱海に着いただろうか。自分と同じ空を見上げているのだろうか。皆で元気に遊んでいるだろうか。仲良くやっているだろうか。想像して脳裏に五人の楽しそうな笑顔が浮かぶ。



(ふっ。ちょっぴり寂しいぜ…。ブラザー)



 キュッと胸を締め付けられながら、カラ松は遠い空をぼんやりと見つめて熱海にいる兄弟に思いを馳せて、溜め息を吐いた。





◇◇◇





 電話を終えた母がカラ松にすがって泣いた。

 滅多に見ない母の取り乱した姿に驚きつつ「一体、どうしたんだぜ?マミー」と恐る恐る背中を撫でていると、母の口から信じ難い出来事が語られた。

 どうやら、兄弟が旅行先で事故に巻き込まれて亡くなったらしい。

 青いパーカーにすがって泣き崩れる母の背中を撫でながら、カラ松はぼんやりと彼女の言葉を聞いていた。

 父さんも母さんも、あなた達が童貞だろうがニートだろうが皆で元気に生きてくれればそれで良かったのよ。それだけで良かったのよ。せめて、お前だけは死なないでおくれ。父さんや母さんより先に死ぬなんて親不孝をしないでおくれ。

 哀しみに震える母の涙声。

 カラ松はひたすら、うん、うん、と頷きながら、母の小さな背中を撫でていた。





◇◇◇



 兄弟の葬儀を終わらせた。

 松野家は父と母とカラ松の三人きりとなった。八人家族で賑やかだった松野家は、今では明かりも灯らない陰気な家と化した。

 六つ子の中でたった一人残されたカラ松はめっきり外に出なくなった。兄弟の葬式を終えた日から、部屋に込もって一睡もせずに、黙々と兄弟全員の人形を作っていた。

 まず最初にカラ松が作ったのはいつも右隣で寝ていた一松の人形だった。
そして、一松が完成すると次は左隣で寝ているトド松を作った。トド松が完成すると、今度はトド松の左隣が寂しくならないようにおそ松を作り、おそ松の左隣が寂しくならないようにチョロ松を作った。最後に十四松を作り、やがて五人全員が揃った。

 出来上がった人形を、それぞれの兄弟の寝床に寝かせて、自分も布団に入り込む。



「……ブラザー、俺も皆といきたかったよ」



 ポツリと口から零れた。

 しかし、自分から皆の元へいくことは許されない。母と約束したのだ。



(…さみしい)



 今までも何度か皆に置いてきぼりにされたり、仲間外れにされたこともあるけれど、まさか突然、五人揃って皆で仲良く死んでしまうなんて思わなかった。なにも、死ぬ時まで仲間外れにすることないじゃないか。

紛い物の兄弟に挟まれながら、カラ松はポロリと涙を一滴だけ溢して目を閉じた。



END



(泉下の客となる=死ぬ)
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