おそ松さん

□松ネタ吐き出し
8ページ/38ページ

*没ネタ
*カラ松Ratは生きてます



ある時、長男が兄弟で旅行に行くことをチョロ松に提案した。チョロ松が旅行のプランを立て、トド松が宿の手配を行った。

成人済みニート六人の男だけの旅行である。六つ子達は今回の旅行を非常に楽しみにしていた。

しかし、当日の朝、六つ子の次男・松野カラ松は寝過ごしてしまい、兄弟に置いていかれてしまった。

昼前に飛び起きて、自分以外の兄弟が誰もいない部屋に気付き、カラ松は非常に焦った。転がるように階段を降り、一階の台所へと駆け込んだ。息を切らせながらパジャマ姿で現れたカラ松を見た母親は「あら、あんた皆ともう行ったんじゃなかったの?」と驚いた顔で言われてしまった。

その言葉に、また、自分は置いていかれてしまったのだということに気付いた。

実は今までにも、こういうことは度々あった。

兄弟の中でカラ松は居てもいなくても大抵気付かれないことが多かった。

なので、朝から皆と何処かへ出掛ける際に、寝過ごしてしまった場合は誰に気付かれずに置いていかれることがあった。そして、今回もまた兄弟はカラ松がいないことに気付かずに旅行へと行ってしまった。


今日は皆と熱海に行く筈だったけれど、置いていかれてしまったのだ。

母が用意した朝御飯は兄弟が全て食べてしまってもうないので、代わりに母からカップラーメンを貰ってお湯を注いで食べた。ズルズルと麺を啜りながら、寝過ごした自分が悪いのだとカラ松は自分に言い聞かせる。しかし、どうしても「俺も皆と一緒に行きたかった!」という気持ちが涙とともにわき上がってきて、ボロボロと泣きながらカップ麺を食べた。

カップ麺の容器を捨てて、ひどく落ち込んだ気分で二階の子供部屋に戻る。敷きっぱなしの布団を片付けようとして、部屋の隅に置かれている水槽が目に入った。

水槽の中のくるりとした小さな瞳が心配そうにカラ松を見上げていた。

そこで、カラ松は気が付いた。

昨夜から旅行のことで頭がいっぱいでラットの存在を忘れてしまっていたことに。

昨夜は寝る前に旅行へ行っている間のラットの世話を、母に頼み込んでそれっきりにしてしまっていた。

自分の不注意で寝過ごして、兄弟に気付かれずに置いていかれて、未練がましく「自分も皆と一階に旅行に行きたかった」と泣いていた自分。
ラットのことを忘れて、浮かれていた自分が、兄弟に忘れられて置いてきぼりにされたと泣いているなんて…。

カラ松は無性に自分が情けなくなった。

母親が餌と水を補給してくれるとはいえ、自分がいないければこの小さなラットは独りになってしまっていのだ。

自分は置いていかれて正解だった。

兄弟に置いていかれたことで、そう気付くことができた。



「すまない、カラ松Rat。母さんがいるからと、お前をひとりにしようとしていたな…。ごめんな」



水槽からそっと小さな体を取り出して謝ると、ラットは「何を言ってるんだ?」と言うように首を傾げてカラ松を見上げていた。

とりあえず、兄弟が帰ってくるまでの間はずっとコイツと遊んでやろうとカラ松は決めた。

それに、コイツがいるから自分は独りじゃないし寂しくもない。

先ほどまでの悲しみや寂しさは、いつの間にかカラ松の中から綺麗さっぱり消えていた。



.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ