その他

□第五人格
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 納棺師をペットにしてからというもの、元々高かったジョゼフの勝率はさらに上昇した。今では常に勝率が9割を維持するようになっている。

 正直、納棺師をペットとして迎えても他のハンターのように人形を愛でるつもりはサラサラなかった。しかし、彼を飼い始めて一ヶ月。口数も少なく、余計なことを一切せずに召使いのように付き従う人形をジョゼフは非常に気に入っていた。

 日頃から無駄なことを話さず、ただ与えられた仕事を黙々とこなす献身ぶりを評価して、褒美として服を与えることにした。他のハンター達が自分のペットに服を与えてはあれこれと着飾らせていたので、ジョゼフも彼らに倣って自分とお揃いの服を与えることにした。



「……へぇ、よく似合っているじゃないか」

「…………」



 鏡に映る姿を褒めると物静かな人形はペコリと軽く頭を下げた。

 青碧色の生地に金と薔薇の刺繍で装飾された上着。袖口はフリルで縁取られており、胸元は真っ白なジャボで飾られていた。ズボンも上着と同じ色の七分丈で真っ白なタイツに黒い革靴。そして、マスクも服と揃えて同じ色の生地に金の刺繍を施した物を特別に作らせたのだ。



「なんとなく地味な人形だと思っていたけれど、こうして服を変えてみると案外悪くないものだね」

「……」



 上機嫌に灰色の髪に指を通すジョゼフに、人形はソッと視線を下げる。そのどこか浮かない様子にジョゼフは眉をひそめる。



「なんだかあまり嬉しくなさそうだね。もしかして、気に入らなかった?」

「……」



 ジョゼフのやや降下した機嫌を感じ取ったのか、人形はふるふると首を振って否定する。



「まぁ、いい。たとえ、お前がその服を嫌だと言っても、このジョゼフ・デソルニエーズのペットである限り、毎日同じ服を着回すのは許さないからな。私が定めた服はきちんと着るように。いいね?」



 拒絶することは許さない。睨みつけるように念押しすると、人形は観念したように目を伏せて頷いた。



「……」



 どこか暗い様子が少し気にはなったものの、考えても仕方がないのでとくに気にしないことにした。人形はただ、大人しく従順にしていればそれでいい。逆らわなければ罰は与えないし、理不尽に痛めつけるつもりもない。きちんと言うことを聞いていれば褒美はやるし、大事にするつもりである。

 とりあえず、気分転換に人形へフレーバーティーを用意するように指示を出すと、ソファーに腰掛ける。テーブルの上に置いていたカタログを手に取り、めぼしいものがないかチェックする。



(次の褒美はこの縦縞の黒模様の服にしようか……。衣装のテーマも私とお揃いだし、ちょうどいいだろう)



 自分と人形がお揃いのテーマで試合に向かうのを想像する。お互いに医師という設定の衣装なので、聖心病院やホワイトサンド精神病院でゲームを行う際に、医療つながりで揃えて行くと面白いかもしれない。次の褒美はこれにしよう。上機嫌に鼻歌を歌いながら、カタログに付箋を貼る。他にもなにか良さそうなものがないかパラパラとページをめくりながら、忠実なペットが紅茶とお菓子を持ってくるのを待っていた。







その頃、サバイバーの館では「利敵サバイバーに御用心!」という注意喚起が掲示板に貼られていた。
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