忍たま
□二人で見上げるお月様
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鉢屋三郎という人物は、飄々とした態度とは裏腹に何事においても慎重な性格であった。特に、大事な大事な雷蔵に関しては慎重を通り越して臆病になり、常に最悪の事態を頭に考えてしまいがちになる傾向があった。それは、この場においても同じであった。
雷蔵は、三郎を好きだと言ってくれた。
良き友人である雷蔵に劣情を抱き、卑猥な妄想をしては人知れずに熱を鎮めている。想像の中で何度も彼を辱しめた。ある時は力で無理矢理彼を捩じ伏せて犯した。また、ある時は恋人のように愛を囁きながら抱いた。毎日彼を見る度に、頭の中で彼を汚していた。
今も純粋に想いを告げる雷蔵に欲情しているのを彼は知らないだろう。
果たして、雷蔵は三郎が必死に隠している貪るような激しい衝動を知っても受け入れられるだろうか。
溢れんばかりの愛も、餓えた獣のような欲望も全て受け止めてくれるだろうか。
(―――もしも、受け止めてもらえなかったら)
鉢屋三郎は恐怖した。
愛する雷蔵の拒絶を怖れるあまり、打ち明けられた想いを信じることができなかった。
彼は、大事な大事な雷蔵に関して特に臆病になってしまう傾向があった。
「雷蔵」
長い沈黙の後にようやく三郎が口を開く。
「俺は雷蔵とは付き合えない」
口から出た言葉は、二人にとって残酷な言葉だった。憎らしいほど綺麗なお月様.