忍たま

□当たるも八卦、当たらぬも八卦
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・星座占いに興味を持つ五年生達。
・鉢雷はくっついてます



休み時間、三郎と雷蔵が鍛練を終えて教室に戻ると、同じクラスメイトの竹谷八左ヱ門と、五年い組の尾浜勘右衛門に久々知兵助の三人が集まって熱心に何かを読んでいた。


「あれ、皆なに読んでるの」


雷蔵が声を掛けると、八左ヱ門が読んでいた本から顔を上げて手を振る。



「おぉ〜ちょうど良いところに。今さ、委員会で勘右衛門がくの一の教室の子から面白い本を借りてきてそれを皆で読んでんだよ」

「へぇーどれどれ」



雷蔵と三郎が三人の手元にある本を覗き込んでみるとそこには『星座占い』と書かれていた。



「……」

「……」



まさか忍たま五年生である彼らがこのような占いに興味があったとは…。驚いた雷蔵と三郎は信じられないと互いに視線を交わらせる。



「何だよ、その反応は。当たるも八卦、当たらぬも八卦。ゲーム感覚で見てみると占いってやつも結構面白いんだよ。試しに雷蔵、この魚座の項目見てみ。ほら、優柔不断だってよ」

「え…」




八左ヱ門に言われて机の上の本を見てみると、ちょうど開かれていた頁に魚座への一言アドレスが載っていた。



『自分の意志で決断する力を身に付けて!』



「えぇ!?」



確かに、日常の些細なことで優柔不断になりがちな雷蔵は自分の意志で判断するのが苦手である。やるべきことがあれば、それをこなそうと熱心に取り組み、目標達成に一直線に突き進めるのだが、私生活においてはそうもいかなかった。どこに行くのも何をするにも誰かの意向に従いがちになってしまう。相手の意向に従っている方が迷い癖を持つ雷蔵にとってはとても楽なことであった。

しかし、まさか占いごときにこんな的確なアドバイスをされるとは…。それは雷蔵にとても大きな衝撃を与えた。

三郎は驚きに固まった雷蔵をチラッと見ると、雷蔵が三郎から離れて八左ヱ門・兵助・勘右衛門の隣に並んで、一緒に本を読み始めた。

たかが占い。されど占い。雷蔵が良ければそれで良い。三郎は何も口を挟まず、机の反対側で雷蔵達の様子を見守ることにした。




「でもさ、俺も雷蔵と同じ魚座だけど、俺はべつに優柔不断じゃないからなぁ。あ、でも豆腐に関してだったら迷うかもなぁ。田楽豆腐杏仁豆腐麻婆豆腐胡麻豆腐明太豆腐冷奴に月見奴揚げだし豆腐に豆腐唐揚げに豆腐のサラダ…」



幸せそうに豆腐料理を挙げ連ねる兵助を無視して、八左ヱ門は魚座の項目に目を通している。



「兵助は『自分の好きなことには我を忘れて夢中になりがちです』だってよ。魚座は溺れやすいから依存症にならないように気を付けろだってよ。豆腐もほどほどにな」

「む、余計なお世話だ!」

「天秤座の勘右衛門は弁舌さわやかなグループの調整役。射手座の俺はテキパキと物事を処理していく、結果オーライ主義のマイペース型。双子座の三郎は考えるより先に行動。たまに先走り過ぎて失敗するってよ」

「当たってるな」

「……」



褒められて気分を良くした勘右衛門は得意気に頷き、先走りして失敗すると言われた三郎は不快そう眉を潜める。八左ヱ門はさらに読み進めていく。




「占いもなかなか面白いのなぁ。うっわ、俺と三郎の相性わりーなぁ。殆ど星一つだわ。あ、でも俺と勘右衛門は相性良いわ。殆ど五つ星だ。…ん?三郎と雷蔵は仲良いわりに相性はあんま良くないのなー」



面白そうに言う八左ヱ門に、三郎の眉間の皺がさらに深くなり、不愉快そうに顔を歪める。



(雷蔵と相性が良くないだと?たかが占いごときで私と雷蔵の何がわかると?)



イラッとして、つい口から出かけた言葉を寸前のところで堪える。腕を組み、いつもよりやや険しい顔をした三郎は明らかに苛ついている。普段はストレスとは無縁に生きていそうな三郎の、苛つきを露にした珍しい態度である。

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