黒駄文
□Ω一松×αカラ松
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僕は発情期の周期が訪れてすぐに、手紙でカラ松を呼び出した。
「兄さんにだけ、相談したいことがある」と相談場所を隔離小屋に指定し、壁に掛かっていた青いパーカーのポケットに手紙を忍ばせると、庭の片隅にある隔離小屋へと向かった。手狭なワンルーム程度の部屋の中には、布団が一式と小型冷蔵庫しかない。また、この小屋には入浴設備はないもののトイレはきちんと設置されているので発情期の3日間は小屋に籠りきりでも、あまり不自由はしない。あらかじめ全ての準備は整えている。いちおう抑制剤を飲んだものの発情期の僕には気休めを程度にしかならない。腹の奥底で息を潜めていた獣が間抜けな獲物が飛び込んでくるのを今か今かと待ち構えていた。
小屋に入ってきたカラ松は僕が発する発情期のΩフェロモンにピクンと肩を跳ねさせた。
「な、何で……?」
カラ松は、まるで発情期が来て混乱するオメガのように呼吸を乱し、蹲る。
基本的に、アルファに発情期はない。
兄の目の前にはオメガの弟しかいない。
普段の僕のフェロモンなら、カラ松の体がそれに反応することはない。
しかし……今の僕はいつもの僕ではない。
「お前……発情期なのに、何で……?」
「発情期だから、お前を呼んだんだよ。クソ松」
息を荒げながら何とか立ち上がろうとするカラ松の横を通って、出入り口の鍵を締める。これで、完全に二人きりの空間となった。両親には前もって発情期になったことを知らせているので僕が隔離小屋にいることは知っている。カラ松は、二、三日家に帰らなくても誰も探したりはしない。
薬でも抑え切れない性欲で頭の中がクラクラする。目の前の餌に食らいつきたくて堪らない。我慢できない。
「ヒヒッ、クソ松お兄ちゃん。俺とセックスしよ」
発情状態で抑制されていたフェロモンが明確な意志により解放され、扉の前で立ち尽くすアルファの兄に一気に襲いかかる。
「や、やめてくれ……一松っ……」
「怖がることなんてないよ。気持ち良くしてあげるからさ。アンタだってヤりたくてヤりたくて仕方ないでしょ。大人しく、体の力を抜いて、全部俺に任せてよ」
嫌がる兄の手を引いて布団の前まで連れて来る。
「だ、めだ……いちまつ、こんなこと、ゆるされな……」
「うるさい。黙って」
力の抜けた体をポンっと突き飛ばすと、フェロモンに支配されて蕩けた体はいとも簡単に仰向けに転がった。力の入らない手足はくたりと脱力しているものの、拒絶するように目を瞑ってイヤイヤと頭を振ってアルファとしての本能に抗っている。本能に逆らい、必死に弟である僕を拒絶する兄の健気な姿であること。しかし、自力で発情するオメガと、それに引き摺られるアルファと、どっちが主導権を握ってるかは一目瞭然。
Ωフェロモンに浮かされたように真っ赤な顔で、荒い呼吸を吐き出す哀れなアルファの雄。弟に欲情された哀れな兄。
狹い部屋の中の布団で熱に浮かされたように辛そうに横たわりながら勃起しているカラ松の痴態に、舌なめずりしながらゆっくりと近付いていく。フェロモンにあてられたカラ松に負けず劣らず、僕の下半身も大きくなっていた。
(コイツを誰とも知らないオメガに奪われるくらいなら、俺がコイツを支配してやる。)
僕はオメガだ。世の中のセオリー通りなら僕がカラ松に抱かれる立場だっただろう。しかし、ヤツはアルファだった。見知らぬオメガに発情する見境なしのアルファの血を引くポンコツだ。カラ松を手に入れるために、僕がコイツの体を作り替えなければならない。ポンコツ兄貴の体に流れるアルファの雄を徹底的にメスにしなければならないのだ。
この先、コイツが誰も抱けないくらい徹底的にメスに変えてやる。
今すぐに食らいついてやりたい獣染みた性衝動を堪えながら、カラ松の上に乗り上げて、着ていたパーカーを託しあげる。その際に僕の手が服の下の肌を掠ってしまい「ひぁっ」とカラ松が甲高い声を上げて身をよじらせた。フェロモンにあてられた身体は敏感になっているらしく、ちょっとした肌の接触にも感じてしまうらしい。媚薬もビックリのフェロモン様々だ。
めくりあげた衣服の下には自己主張するようにツンッと尖った肉芽が二つ。敏感な先っぽはもうすでにコリッコリに立ち上がっている状態だ。女みたいに乳首で喘がせてやる、と意気込んでさっそく指先で摘まんでコリコリと弄くり回す。
「ひぁっ……やめっ、……」
制止の声も無視して、熟れた突起をグミのようにこねくり回して、ゴムのように引っ張ったり、逆に押し潰したり好き放題に遊ぶ。指先でくにくに弄くる度に、声を押し殺そうとしているカラ松から、途切れ途切れに甲高い喘ぎを上がるのが楽しくて仕方ない。僕の指に胸を押し付けるように腰を浮かせる兄の姿に興奮して体中が熱くなる。
今まで、何度もカラ松のエロい妄想はしてきた。カラ松をイジメて泣かせたその顔をオカズに妄想したこともあるが、実際のカラ松は想像以上だ。紅潮した頬。普段は凛々しい眉が力なく下がって弱々しくみえる表情は、幼気な子供のようだ。しかし、僕を見上げる熱く潤んだ瞳は恐ろしいほどこちらの劣情を煽ってくる。
無意識に快楽を貪り、いやいやと声を殺して喘ぐカラ松の姿から目が離せない。一瞬たりとも見逃したくない。
「いやだぁ……触る、なっ……いちまっ……んっ、んぁっ……!」
「あっそう。なら吸うね」
「ひぅっ! アっ〜〜〜! アっ、アァ!」
赤く色付いてきた乳首に赤ん坊のようにチュウッと音を立てて吸い付くと、カラ松が僕の頭に縋るように抱き締めてきた。まるで、僕を乳首から離すまいとしているようにも思える力強さだ。ぎゅうぎゅう抱き締められて息苦しいけど、ちょっと嬉しいし、僕の頭を抱えながら喘ぐ兄の声に、乳首を噛みちぎってやりたいくらい興奮させられる。激しく湧き上がる衝動を堪えて、乳汁を絞りとるかのようにカラ松の真っ平らな雄乳を揉みしだいて、右に左にと好き勝手にベロベロと舐めまわして、左右の尖端を交互に思いっきり啜る程度で我慢した。
「……ひぁっ、あぁあっ……いちまっ、……んぁっ」
「オメガの弟に乳首吸われて気持ち良いんだ? お兄ちゃん」
熟れきった小さな実を軽く歯で挟んでやると、口腔内で乳首がピクリと震えた。その反応が面白くってもう少し力を加えて挟んでやると、グイッと頭を押し退けられた。
「は……歯ぁ、当てるなぁ……。怖いぃ……!」
抗議するように見上げるカラ松の目から涙が零れ落ちた。カラ松の泣き顔が僕の加虐心を余計に煽ってくるので、わざと歯を見せ付けて笑ってやる。
「ヒヒヒッ」
こんなヘタレたビビリがアルファだと?
弟のフェロモンに支配されて、長男にしか見せないような泣き顔をみっともなく晒して、無意識に快楽を追って流されるような奴が……。
運命の相手でも何でもない運命値がたったの2%しかない血の繋がった弟に犯される兄。
「アンタさ……もう、アルファとして終わってるね」
オメガの弟に犯されるアルファとか、笑える。
これで、将来オメガの弟に犯されたアルファとして運命のつがいに出会ったら最っ高だね。どんな顔をしてコイツはその運命の相手とやらを抱くのだろうか。反吐が出そうな悪夢にゾクゾクする。
はぁ、はぁ、と甘い吐息を零しながら、カラ松が不安げに僕を見上げる。
「性種別カースト最上位って言われているアルファ様の希少な雄穴に、カースト最底辺のオメガチンポをぶち込んでやるから、ちょっと待ってて」
「え……?」
ジーンズを脚から下着ごと引っこ抜いて壁に放り投げる。衣服が脱げた右脚を持ち上げて持参したローションで指を濡らして堅い蕾にそっとあてがう。
「や、やめろ……お尻汚い……! 気持ち悪いぃ……」
「はいはい。我慢我慢」
「なんで……いちまつ……」
弱弱しく震える涙声。
「俺のこと、そんなに嫌い、だったのか……?」
瞳の奥に悲痛な色を湛えて、問いかけられる。
違う。
違うよ。カラ松。
「……別に、嫌いじゃないし」
嫌いな男を、家族を、抱くワケがない。
「…………これは、アルファのアンタを、メスにするためにやってる」
「え?」
カラ松に覆いかぶさって、左手は閉ざされた入り口を拡げる。挿入する指を一本、二本と増やしつつ、右手は胸を柔らかく揉むように愛撫する。小さな飾りをツンツンと軽く突っついたり、くにっと伸ばしたり軽い刺激を与えてやると、真っ赤な顔をしたカラ松が必死に声を殺しながらピクピクと身を震わせる。
温かい秘部を慎重に指を動かしていくと、中指に胡桃ほどの大きさのしこりに触れた。
「ーーーひァッ!」
唐突な快感に、カラ松が大きく跳ねた。
「見つけた。お前の雌スイッチ」
コレだよ。コレ。僕が探していたカラ松をメスにする重要なポイント。
トンッ、トンッ、トンッと軽く指先でノックする度に、カラ松は啼きながら、腰をくねらせて快感に身悶える。
「ヒヒッ、アンタもうメスだね。弟の指をケツに突っ込まれて喘ぐメス」
「んぁッ…ふッ…はッ、はっ、はぁッ…やっ、あぁッ」
犬のように呼吸を乱して甲高い声を上げて喘ぐカラ松に、呪いの言葉を囁きながら、ローションをさらに指に塗りつけて、先程みつけたメスしこりを目掛けて高速指ピストンを叩きつける。
「オラッ、喘げ! メスらしく喘げよ! クソ松」
「ああ、あ、あ、ひぁあ、っ、あぁあーーーッ」
天を仰ぐように勃起していたカラ松はペニスに触れることなく射精し、自分で自分の腹を汚した。
「クッ、ヒッヒッヒッ! アルファのくせに、兄貴のくせに、オメガの弟に指を突っ込まれて、イかされるってどんな気分ですかねえ。クソ松兄さん。ほら、教えてよ」
前を触ることなく、僕の指だけでトコロテンをかました兄にめちゃめちゃ興奮した。雄イきしたばかりで力が抜けて絶頂の余韻に浸っている兄に構うことなく、尻を持ち上げて散々指で解した後孔に先端をあてがい、先ほど指で弄くり回していた前立腺めがけてズパンッと一気に奥まで突っ込む。
「んぁっ、あアアァッ!! ……なっ……な、なんで? イッ、いちまつッ、なんで?」
「何でって、俺イってないし」
「やぁッ…やだ! ……もう、むりぃっ!」
「無理じゃない。無理じゃない。ほら、尻締めてよ」
「ヒァッ、やめ、……アッ、アッ、アッ、アッ、アッ」
ズンッ、ズンッ、ズンッ、ズンッと熱く猛り狂った肉棒でカラ松のメススイッチを突き刺し、叩きつけ、押し潰す。蕩けるように温かく柔らかく狭い肉にキュウキュウ締め付けられ、僕の射精感もグングン高まる。
カラ松が僕を締め付けてくる。気持ちいい。勝手に腰が揺れる。体が熱い。止まらない。
「ハァ、ハァ、ハァ……ねえ……気持ちいい?」
「んぁ、んっ、んっ、ふっ……」
問いかけても返事はない。時折、押し殺したような気持ちよさそうな声を上げながらも、一方的な快感に耐えるようにきつく目と口を閉ざして涙を流していた。
無理やりにメスにされた兄は、泣きながら僕に抱かれている。
ギュウッと心臓が雑巾のように締め付けられて苦しくなった。胸が痛い。苦しい。
ごめん。ごめんなさい。カラ松。
「カラ松……」
僕を見て。
そんなに、僕に抱かれるのが嫌だったの?
僕が男だから?
弟だから?
オメガだから?
運命の相手じゃないから?
運命の相手だったら、良かった?
「…ハッ……ハァ、……カラ松、俺と堕ちて」
涙を零す兄を強く胸に抱き締めて懇願する。
「一緒に、堕ちてよ」
「いちまつ……?」
「ずっと前から、お前のことが、好きだった」
発情期ですっかり蕩けた脳味噌は涙を流すカラ松を見て、忌まわしい呪いの言葉を吐露した。秘めた想いと共に、兄の中に勢い良く欲望を吐き出した。