黒駄文

□魔獣の牙
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[おまけ@]


一松がカラ松と共に森に移り住んで一週間。


屋敷にはおそ松とトド松がいて、二人でソファーでだらだらと寝そべっていた。



「そういえば最近一松兄さん、森に引きこもってるみたいだよ」

「へぇー」

「僕たちの家に帰って来ないし、何してんだろうねぇ」

「……新しいペットを飼い始めて付きっきりになってんじゃねえの」

「え、なに?新しい猫でも産まれたの?どんだけ猫増やす気なのさ。猫松兄さん……」

「いやいや、猫じゃないから」

「は?」

「天使だよ」

「はぁ?天使ぃ!?どーゆーことおぉ!?」

「いやぁー。何かね、一松のヤツさぁ俺らに内緒で天使と仲良くしてた挙げ句に受肉して自分も天使になろうとしてたみたいでさー」

「いやいや、闇松兄さんが天使になるとか百回生まれ変わっても無理だから」

「そうそう。あの闇人形が天使になるとか神様が賄賂でも受け取らない限りナイナイ。 だから、俺が一松の天使を堕天させてやったワケよ」

「え、天使を堕天させちゃったのお?!」

「うん」

「おそ松兄さんはどうしてそんな素敵なことがあっさりできちゃうのぉ!?淫魔の僕もビックリだよ!!」

「でしょでしょ。褒めて褒めてー」

「で、天使どうだった?可愛い女の子?それとも男?」

「男。でも、結構楽しめたぜ。ノーパンだったし、脱がせんのも楽だったわー」

「へえ、アイツらノーパンなの」



 驚いたように目を丸くするトド松に、得意気に胸を張ってニヤリと笑う。



「そーそー。アイツら、ノーパンでカミサマにお仕えしてんの」

「えー!?嘘でしょ!?」

「マジマジ。ちゃんとこの目で確かめた」




 自分の目を指さして言うおそ松にトド松は腹を抱えて爆笑する。



「やめてよ、おそ松兄さん。想像したら笑いが止まんない」

「処女だったけど、身体の具合も良かったし、結構楽しめたぜ」

「そんな面白いことしてんのなら僕も混ぜてくれたら良かったのにぃ」

「お前、その時、吸血鬼誑しに行ってたじゃん。じゃあさ、こんど一松のとこに行って混ぜてもらおうぜ。堕天した天使はカミサマの加護を失ってるからお前のフェロモンを浴びせれば一発でメロメロに堕ちるでしょ」

「いいねいいね!僕、天使では遊んだことないから楽しみだなあ♪」



 二人の悪魔はワイワイとこれからの予定を話し合いながら、子供のように笑い合った。








[おまけA]


 赤い毒に侵された魔界の空に、突如、光輝く黄金の門が現れた。

 門の向こうからは大きな白い翼を持つ天使が魔界に足を踏み入れる。彼の手には先端が歪に凹んだ金属バットが握られている。



「ヴォェエエエエ!!!ヴォェ!ヴォエェェ!魔界の空気汚ネェェエエェ!!」



 苦しげに濁った叫び声を上げながら、血のように赤い空を弾丸のように飛び回る天使。その二つの瞳は焦点が合っておらず、左右ともにあらぬ方向を見ている。

 毒に汚染された魔界の空気は、天使にとっては強烈な毒である。通常の天使ならば空を飛ぶどころか普通に歩くことすらままならない。しかし、この天使はミサイルのように空を突っ切ってギュンギュンと飛んでいる。



「うわっ。アレ天使じゃん。何でアイツ、平気で空飛んでんだろ……」

「なんか、見るからにヤバそうなヤツだな」



 魔界の荒野で二人の狼男がヒソヒソと声を潜めながら空を指差していた。すると、天使が唐突に地上に目を付けて「アはァ〜」と大口を開けて笑い、急遽、進路を変更して地上に核弾頭のように突っ込んできた。

 野太い悲鳴が野原に響き渡った

 隕石のように落ちてきた天使は、砂煙の中からユラリと肩を揺らして姿をあらわした。



「アッははァ〜」



 笑顔で首を傾げながら、凹んだバットを片手に歩く姿はかなり異様である。



「何だ、アイツ!」

「天使のくせに……かなりイカれてやがる!!」



 何とか落ちてきた天使を避けたものの、すぐ間近に現れた狂気の天使に身の危険を感じる。



「ねぇねぇ、この辺りで黒い羽をした天使を見なかった?」

「ンなもン知らねぇよ!」



 乱暴に答えた狼男に、天使は「そっかァ〜!」と答えると、「ありが特大ホームラン!」と笑顔で叫びながら、大きくバットを振りかぶった。


◇◇◇



 白い衣服を所々血に染めた天使は笑っていた。



「あハ、早くカラ松兄さんを見付けないト」



 そう言うと、足元の肉塊には見向きもせずに白い翼を広げて再び空へと舞い上がる。

 手には血で汚れ頭が少し凹んだバットが握られていた。よく見るとバットには薄く掠れた文字で「十四松」と名前が大きく書かれていた。

 彼……十四松は、魔に身を堕とした兄に永遠の救済を与えるために、天から派遣された天使である。

「待っテて、カラ松。ぼくガ兄さんを救ってアげるカラ」







【読まなくてもいい捕捉設定】


⚫デビ松サイド

・おそ松
大悪魔の父親を持ち、両親揃って悪魔の純血悪魔。
純血故に強力な魔力を持ち、魔界でも高位の悪魔として有名。
魔女と仲良し。
一松とトド松の異母兄弟で弟大好きで可愛いと思っている。
特に、楽しいこと大好きな快楽主義な者同士トド松とはよく気が合い、肉体関係まで持っているがお互いに恋愛感情はない。
父親から強欲を司る力を受け継いでいる。

・一松
悪魔と魔獣のハーフとして生まれた。
悪魔に属する魔獣ケット・シー。
母親から受け継いだ森を管理し、使い魔達の世話をしながら兄弟と魔界の屋敷で暮らしている。
父親から嫉妬を司る力を受け継いでいる。

・トド松
悪魔と淫魔のハーフとして生まれた悪魔。
淫魔のフェロモンで人間や知能の低い魔物達をたぶらかして遊んでおり、おそ松や一松に注意されている。
トド松のフェロモンは家族には効かない。
父親から色欲を司る力を受け継いでいる。



○ジェル松サイド

・カラ松
寛容と忍耐を司っていた堕天使。
おそ松に堕天させられた。
魔獣一松の恋人。

・チョロ松
正義を司る女神。
カラ松と十四松の上司。
堕天使になったカラ松を始末するために十四松を派遣した。

・十四松
愛と希望を司る天使。
カラ松を始末するために派遣された撲殺天使。
カラ松の弟。兄であるカラ松よりも力が強い上級天使。
魔界の毒に弱ったりはしなかったものの、魔界の空気を吸って精神をやられてしまった。
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