おそ松さん

□ホムンクルスは愛を歌う
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 翌朝、カラ松は柔らかな布を布団代わり敷いた箱の中で目を覚ました。



「あ、おはよー!ほるむくろろさん」

「……おはよう、十四松」



 むくりと体を起こして、辺りを見回すと目の前に十四松がいてカラ松を見下ろしていた。どうやら、寝室の窓辺にカラ松の即席ベッドを置いてくれていたらしい。

「これ……俺のためにわざわざベッドを作ってくれたのか」

「うん。どうだった?よく眠れた?」

「あぁ、見ての通りぐっすり眠れたぞ。ありがとな」



 握りこぶしを作って伸びをすると、十四松は嬉しそうに笑う。



「赤頭巾が朝ごはん作ってくれてるよ。早く行こ」

「あぁ」



 差し出された十四松の手にひょいと乗って寝室を出た。

 カラ松と十四松がテーブルに着くと、そこには既に食事の準備が整っていた。三人揃って手を合わせて、野菜がたっぷり入った温かいスープと柔らかな白パンを食べた

 カラ松は昨日と同じように小さな瓶の蓋を器にしてスープを飲み、赤頭巾が細かく千切ってくれたパンをもふもふと食べた。

 食事を終えると、赤頭巾はカラ松にある物をプレゼントしてくれた。



「カラ松さん、これ良かったら着てください」



 渡されたのはカラ松の大きさに合わせた青い服と靴下だった。ハンカチを巻き付けただけのカラ松の格好を見かねて、赤頭巾が一晩掛けて作ってくれたのだ。



「あ……ありがとう!」



 おずおずと服を受け取り、体に巻き付けていたハンカチを外して目の前で袖を通した。

 青い服はゆったりとした長袖で、裾は踝まで届く長さまである。両腕の袖は大きく開いていた。見たところ、聖職者や魔術師のローブと似ている。



「よく似合ってまっせー!すっげーカッコいいよー!」



 十四松が手を叩いて褒めてくれた。

 カラ松は「そ、そうか?ありがとう」と頬を染めながら笑った。



「赤頭巾。素敵な服をありがとう」

「どういたしまして」



 お礼を告げるカラ松に柔らかな笑顔を向けながらも、赤頭巾の内心は少し複雑だった。「袖口のサイズや裾がちょっと大きすぎたかも」と心配になってしまった。しかし、十四松がカラ松に「似合ってるよー!」と言い、さらに嬉しそうなカラ松の笑顔に段々「ま、いっか」と思うようになった。そして、多少サイズが大きかろうが小さ過ぎるよりマシよね、と無理矢理に自分を納得させた。







◇◇◇










 「それじゃあ、気をつけてね」と言って見送る赤頭巾にお礼と別れを告げて、カラ松と十四松は家を発った。

 カラ松は狼に変身した十四松の頭にしがみつきながら、遠ざかる小さな小屋を振り返る。

 カラ松に美味しい食事と服をくれた優しい人。笑顔がとても可愛い赤頭巾。



「……さよなら」



 小さく溢した別れの言葉に、十四松が首を上げた。まるで、「何か言った?」と確認するような仕草に「ううん、なんでもない」と早口に告げた。

 赤頭巾との別れを経てちょっぴり切ない気分になったカラ松は、十四松にすがるように掴まりながらセンチメンタルな鼻歌を歌った。







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