花と恋

□第1話 黒い花
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最悪の日というのは、こういうことを言うのかもしれない。

霧崎第一高校に入学して2週間が経ち、そろそろ学校にも慣れる頃…
なのだろうが、私は校舎の中を彷徨っていた。

俗に言う迷子というやつだ。

しかも今は放課後、大半の生徒はもう残っていない。

場所を聞こうにも人がいないのだ。

(ああ、自分が方向音痴ってこと忘れてた…しゃあないっ)

手当たり次第行ってみようと気合を入れ、渡り廊下を歩いて体育館の近くを通ったときだった。

「…だよ…え…」

微かだったけど誰かの声が聞こえた。たぶん体育館裏だ。

(気になる、いやいやそんなことしてる場合じゃ)

しかし、好奇心には勝てないもので、私はそろりと体育館裏へと向きを変えた。
それが間違いだったと気付いたのはすぐ後。

「ふざけんじゃねえよ!」

怒声と殴る音が、耳に飛び込んできた。

(なになにケンカ!?)

そっと顔を覗かせると、1人の男子生徒がもう1人の胸ぐらを掴み、顔めがけて拳を振り上げていた。

「おとなしく年下なんかのお前の命令聞いてやってるのに何でレギュラーになれねえんだよ!!
いつもいつも上からもの言いやがって、ふざけんじゃねえ!!」

(うそ、一方的じゃん…誰か人呼ばなきゃ…)

そう思っても恐怖で体が動かない。

すると、黙って殴られていた男子生徒が口を開いた。

「ふはっ言いたいことはそれだけか?」

「あ?」

「何が言いたいのか黙って聞いてやったけど、くだらねえ。ただあんたにレギュラーになる実力がねえだけの話だ」

(この人何言ってんの!?)
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