泡沫の長夢

□君と手を取り合って 2
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「あ、アヴィ王子だー!」
「姫様もいるー!」


町に視察に出掛けると、剣を教えてる子供たちが群がってきて、俺達の周りに小さな輪を作る。いつも思うが、元気な奴らだ。
姫はニコニコと笑いながら、一人一人に声をかけていた。だが、子供というものは時にとんでもない爆弾を仕掛けてくる。


「ねぇねぇ、今日はデートなの?」
「えっ……!」
「なっ……し、視察だ!」
「えー?違うのー?」
「アヴィ王子照れてるー!」
「おい、お前たち!」
「怒ったー!逃げろー!!」


最近の子供はませていると聞くが、こうもからかわれると、さすがに俺も耐えられない。俺が少し声を荒げると子供たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。なんて逃げ足の早い……。明日からの鍛練を少し厳しくしてやるか。
そんな大人げないことを考えながらふと隣を見ると、姫は恥ずかしそうに頬を少し染め、顔をうつ向かせていた。そんな彼女を見て、俺もまた顔が熱くなってくるのを感じた。周りからの視線も妙に心に突き刺さる。


「と、とにかく行くぞ」
「う、うん……!」


それらを振り払うように俺は姫の手を引き、少し早足で歩き始めた。とにかく早くこの場から去りたい。それは姫も同じようだった。
しかし、これから行く先々の全ての人達に、先程の出来事をからかわれるとは俺も姫もまだ知らなかった……。




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