泡沫の夢

□あなたに贈る花束
1ページ/1ページ




Twitter企画「#夢100企画幸せの花束」参加作品





色とりどりの美しい花が咲き誇る花畑。彼の故郷にある青紫の花畑も美しかったけど、ここにはまた違う感動があった。


「綺麗だよな……。さすが花の国ってところか」
「そうだね」


そんな花畑を彼と二人で並んで歩く。柔らかい風が、花を揺らしながら香りを運んできてとても心地よかった。


「それで……なんだよ。俺に渡したいものって」


ふとアヴィが立ち止まり、私の方を振り向いた。今日ここに誘ったのは、私が彼に渡したいものがあったからだ。


「うん。いつものお礼をしたくてね」
「お礼?」
「アヴィはいつも私を守ってくれるのに、私はアヴィに何もしてあげられないから……せめてお礼をしたくて」
「そんなのお礼を言われる程のことじゃねぇよ。俺が……お前を守りたいって、だけだから」
「それでもお礼を言いたいの。いつも守ってくれてありがとう。それと、これをあなたに……」


私は、後ろに隠していたあるものをアヴィへと差し出した。


「私がアヴィにできることって言ったら、これかなって思って」


それは私の想いを込めた作った花束だ。


アザレアーーーーあなたに愛されて
クチナシーーーー私はとても幸せです
ベルフラワーーーーー感謝の気持ちを
キキョウーーーー変わらぬ愛を
ナズナーーーーそして、私のすべてを捧げます


「どうか……受け取ってください」


選んだ花と、その花に込めた想いをアヴィへと告げる。ドキドキとして、彼の顔がまともに見れない。アヴィは今、どんな顔をしているのだろう。窺い見る勇気もなく、私はじっと花束を見つめていた。
どれくらいそうしていただろう。アヴィの手が、花束を持つ私の手にそっと添えられた……かと思うと、花束ごと私は彼に強く、優しく抱き締められていた。


「あ、アヴィ…!?」
「……ありがとうな。すっげぇ嬉しい…」


耳元をくすぐるような感謝の言葉が嬉しくて、けれどどこかむずかゆくて、アヴィの胸に顔を埋める。聞こえてきた胸の音はいつもより早い。私の音と同じくらいに。


「……なら、俺はすべてをかけてお前を守ると誓おう」
「え……?」
「お前の幸せと笑顔を……他の誰でもない、この俺が守ってみせる」
「……アヴィ」


顔を上げると、アヴィの目は柔らかく微笑んでいて、彼の頬はほんのりと赤くなっていた。きっと私の顔も同じように赤くなっているのだろう。アヴィの手が再び花束に添えられて、私たちは小さく笑い合う。そしてコツンと額を合わせ、触れるだけのキスをした。触れた部分から伝わるあたたかさが幸せに変わって、胸に満ち溢れていった。



幸せの花束ーーーー。
それは贈るものと贈られるもの、二人に幸せを与えてくれる、素敵な贈り物だった。




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ