泡沫の夢
□あなたに贈る花束
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Twitter企画「#夢100企画幸せの花束」参加作品
色とりどりの美しい花が咲き誇る花畑。彼の故郷にある青紫の花畑も美しかったけど、ここにはまた違う感動があった。
「綺麗だよな……。さすが花の国ってところか」
「そうだね」
そんな花畑を彼と二人で並んで歩く。柔らかい風が、花を揺らしながら香りを運んできてとても心地よかった。
「それで……なんだよ。俺に渡したいものって」
ふとアヴィが立ち止まり、私の方を振り向いた。今日ここに誘ったのは、私が彼に渡したいものがあったからだ。
「うん。いつものお礼をしたくてね」
「お礼?」
「アヴィはいつも私を守ってくれるのに、私はアヴィに何もしてあげられないから……せめてお礼をしたくて」
「そんなのお礼を言われる程のことじゃねぇよ。俺が……お前を守りたいって、だけだから」
「それでもお礼を言いたいの。いつも守ってくれてありがとう。それと、これをあなたに……」
私は、後ろに隠していたあるものをアヴィへと差し出した。
「私がアヴィにできることって言ったら、これかなって思って」
それは私の想いを込めた作った花束だ。
アザレアーーーーあなたに愛されて
クチナシーーーー私はとても幸せです
ベルフラワーーーーー感謝の気持ちを
キキョウーーーー変わらぬ愛を
ナズナーーーーそして、私のすべてを捧げます
「どうか……受け取ってください」
選んだ花と、その花に込めた想いをアヴィへと告げる。ドキドキとして、彼の顔がまともに見れない。アヴィは今、どんな顔をしているのだろう。窺い見る勇気もなく、私はじっと花束を見つめていた。
どれくらいそうしていただろう。アヴィの手が、花束を持つ私の手にそっと添えられた……かと思うと、花束ごと私は彼に強く、優しく抱き締められていた。
「あ、アヴィ…!?」
「……ありがとうな。すっげぇ嬉しい…」
耳元をくすぐるような感謝の言葉が嬉しくて、けれどどこかむずかゆくて、アヴィの胸に顔を埋める。聞こえてきた胸の音はいつもより早い。私の音と同じくらいに。
「……なら、俺はすべてをかけてお前を守ると誓おう」
「え……?」
「お前の幸せと笑顔を……他の誰でもない、この俺が守ってみせる」
「……アヴィ」
顔を上げると、アヴィの目は柔らかく微笑んでいて、彼の頬はほんのりと赤くなっていた。きっと私の顔も同じように赤くなっているのだろう。アヴィの手が再び花束に添えられて、私たちは小さく笑い合う。そしてコツンと額を合わせ、触れるだけのキスをした。触れた部分から伝わるあたたかさが幸せに変わって、胸に満ち溢れていった。
幸せの花束ーーーー。
それは贈るものと贈られるもの、二人に幸せを与えてくれる、素敵な贈り物だった。